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夜明けのフロスト [小説レビュー]

「夜明けのフロスト」(R・D・ウィングフィールド他) ※光文社文庫

様々な作者の短編を集めた短編集。以下の7編が入っています。
「クリスマスツリー殺人事件(レオポルド警部もの)」エドワード・D・ホック/「Dr.カウチ、大統領を救う(ドクター・カウチもの)」ナンシー・ピカード/「あの子は誰なの?(ノンシリーズ)」ダグ・アリン/「お宝の猿(ダルジール警視もの)」レジナルド・ヒル/「わかちあう季節(探偵シャロン&名無しの探偵もの)」マーシャ・マラー&ビル・プロンジーニ/「殺しのくちづけ(ダイヤモンド警視もの)」ピーター・ラヴゼイ/「夜明けのフロスト(フロスト警部もの)」R・D・ウィングフィールド
表題になっているフロスト警部のものがボリュームも一番あって、短編ながらギリギリフロスト節を感じられる作品となっています。他作品も有名所が多く、クオリティ的には「?」の付くものもあるが(笑)、ミステリー入門編としてはそれなりに良いんではないだろうか(価格も安いし)。

読み終わってから紹介するまでにずいぶん間があいてしまったので細かい話はしないけど、タイトルに惑わされて完全な「フロストもの」だと思って買っちゃうとガックリかもしれないけど、上記のような有名シリーズが少しずつ味わえるので、本選びに迷ったらこれを読んでみるのも一興ではないだろうか。もちろんフロストファンも必携であるw


夜明けのフロスト (光文社文庫)

夜明けのフロスト (光文社文庫)

  • 作者: R・D・ウィングフィールド
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/12/08
  • メディア: 文庫

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ライラック・ホテルの怪事件 [小説レビュー]

the_mystery_at_lilac_inn「ライラック・ホテルの怪事件」(キャロリン・キーン) ※創元推理文庫

少女探偵ナンシー・ドルー第4弾。
ナンシーは友人のヘレンと共に、共通の友人であるエミリーが新たにオープンさせる〈ライラック・ホテル〉に招待される。しかしオープン間近のホテルでは、幽霊が出るという噂が立って従業員が一人辞めてしまったり、ライラックの樹が盗まれたり、レコードが勝手に鳴り出したりと、不可解な出来事が起きていた。
一方ナンシー宅に泥棒が入ったと思えば、街にはナンシーの偽物が出没してナンシーの評判を落とす。
いったいどんな陰謀が進行しているのか、ナンシーは捜査に乗り出す・・・・。

4巻目にして勧善懲悪の図式が若干崩れ、犯人っぽい人数が多少増えたのでミステリらしくなりましたw でもライトノベルなのは相変わらず1〜3巻と同様で、それ以上でも以下でもありません。
ただ、今回はいかにも関連のなさそうな事件が複数起きている事で、若干モリモリな印象。ページ数もない中で、当然ながら全ての事件が最終的には集束して行くので、クライマックスにだいぶ無理が生じています。ネタばらしなしでは説明もし辛いのですが、この事件がこんな壮大な計画に繋がってるのかよ?とか、ふたを空けてみればイタズラしただけ的なオチも一部あり、意欲作な割には今イチ腑に落ちない感じで終わっちゃうんですよねぇ・・・・。
魅力である、在りし日のアメリカン・ライフやら、ナンシーはじめ善玉登場人物たちのキャラクター、といった要素は前作までと同様ですから、もうこの辺りに惹かれた方たちは読むしかないでしょ!という感じですが、このシリーズを最初に読むなら今作は避けた方がいいかもなぁ。

それにしてもこのシリーズ、ウィキに全く載ってない(汗)。盛り上がりが感じられないんだけど、どこまで刊行されるかだんだん心配になって来た(爆)。


ライラック・ホテルの怪事件―ナンシー・ドルーミステリ〈4〉 (創元推理文庫)

ライラック・ホテルの怪事件―ナンシー・ドルーミステリ〈4〉 (創元推理文庫)

  • 作者: キャロリン キーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 文庫

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再起 [小説レビュー]

再起「再起」(ディック・フランシス)※ハヤカワ文庫HM

隻腕探偵シッド・ハレー四度登場!
競馬専門の探偵をしているシッドは、知り合いの騎手が勝利したにも関わらず、調教師と言い争っているのを目撃する。八百長を持ちかけられていたのではないかというシッドの不安を更に超える形で事件が起こる。なんとその騎手が直後に射殺されたのだ!シッドは、政府筋のアーチイや馬主で上院議員のエンストーン卿からも様々なレベルで八百長レースに関する調査を依頼され、併せて騎手の殺人にも調査の手を伸ばす。しかし、それを快く思わない人物に恋人・マリーナが襲撃された!シッドの不屈の心が燃え上がる・・・。

今さらこの競馬シリーズについて、面白いなんて言葉は不要でしょう。まぁ特にシッド・ハレーシリーズの作品ですからねw 今回の試練は、恋人という枷を狙われてしまうところ・・・・と思わせて、しっかりシッド自らも最後には追い詰められてしまいます。この辺りは往年の作品を彷彿とさせますね。
全盛時代の作品はどれも最後は主人公が肉体的に追い詰められるがギリギリのところで『不屈の魂』で踏みとどまり、最後には悪が倒れる・・・というのが常道でした。またその描写たるや読んでるだけで苦痛を感じるくらい(爆)だけど読まなきゃ終わらないし・・・という、読者にも『不屈の魂』を要求する作風でしたね(笑)。ワタシはそこまでの描写はちょっとキツ過ぎて、ここ最近の作品くらいがちょうどいいなぁ、と思っていますけど。
ただ、そういう展開に戻って来たというのは、新たなパートナーである息子さんの影響もあるのかな、と思ってしまいます。この作品は、以前当ブログでも書きましたが、長年のパートナーだった奥さんが亡くなってから6年間の断筆があり、その沈黙を破って久々に発表になった作品。老老ペア(汗)で書いていた作品とは趣きが変わって当然なのかもしれません。
次作からは遂に著者名も〈ディック・フランシス&フェリックス・フランシス〉と息子さんとの共著となり、もしかするといよいよディックも完全引退が近いのかもしれません。何しろもう88歳ですからね(驚)。

それにしてもシッド・ハレーですが、ワタシの感覚からするともう50歳前後といった感じだったんですが、今作でたしか38歳となっています(木亥火暴)。初登場する「大穴」が米国で出版されたのが1965年。ワタシの生まれる前年ですから、シッドがそれ位(50前後)の年齢だと思っていても何の不思議もないでしょう!?今までは恋愛模様など描かれなかったのでイメージする物差しがなかったのですが、今作では美しく(そして強い)ヒロインが出て来るので年齢が気になった次第。


シッドの登場作品を時系列順に紹介します。興味を持ったら、是非時系列順にお読みください。ちなみに当記事左上の画像はハードカバーの表紙。こちらの方が文庫のアッサリした表紙より“競馬シリーズ”っぽいでしょw
大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-2))

大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-2))

  • 作者: ディック・フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/04
  • メディア: 文庫
利腕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12‐18))

利腕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12‐18))

  • 作者: ディック・フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1985/08
  • メディア: 文庫
敵手 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

敵手 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ディック フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 文庫
再起 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-41) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

再起 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-41) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ディック フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/11/07
  • メディア: 文庫

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ウォリス家の殺人 [小説レビュー]

ウォリス家の殺人「ウォリス家の殺人」(D・M・ディヴァイン) 創元推理文庫

歴史学者のモーリス・スレイターは幼なじみのジョフリー&ジュリア・ウォリス夫妻に請われて夏休みをウォリス宅で過ごす事になる。ジュリアの反対する、ウォリスの長女・アンと、モーリスの息子・クリスの婚約、有名作家でコンスタントに執筆をしていたジョフリーの突然の執筆停止、25年間音信不通だったジョフリーの兄・ライオネルの突然の来訪・・・ウォリス家はその時期、様々な出来事が平行して起きていた。
皆が胸騒ぎに揺れる中、遂にジョフリーが凶弾に倒れてしまう。明らかにライオネルの犯行と見られた事件だったが、ライオネルの主張の正当性が評価されるにつれ、徐々に関係者の間でお互いに不信感が芽生えていく。真犯人はいったい誰なのか。そして第二の犯行が・・・・。

という事でディヴァイン第二弾。前作は1966年の作品でしたが、こちらは作者の死後に出版されたという事で1981年の作品。ただ、二作とも非常に限定された舞台での話(第一弾は大学内、この二弾は個人宅)という事で、余り時代背景を意識する必要はないように思う。
第一弾では脇役の描写があまい印象だったが、今作では割とその辺りも良くなっていて、真犯人の想像の余地が膨らんでいるのがフーダニットとして更に良くなっている印象だ。それによって最終盤まで誰が犯人でもおかしくないという雰囲気を作っているのが何より秀逸。
出来れば更なるミスディレクションによって読者に『あぁ、コイツが犯人じゃねぇか?』と思わせた上で違う真犯人を提出となれば完璧なんだけどw まぁ、そこまで言うのは酷か。
人物描写もしっかりしてるし、第一弾に引き続いてこれまたいい感じです。以降も頑張って邦訳してね、創元さん!


ウォリス家の殺人 (創元推理文庫 M テ 7-2)

ウォリス家の殺人 (創元推理文庫 M テ 7-2)

  • 作者: D.M.ディヴァイン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 文庫

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夜ふかし屋敷のしのび足 [小説レビュー]

51EAJlZDDOL._SS500_.jpg「夜ふかし屋敷のしのび足」(コニス・リトル) 創元推理文庫

1930年代のアメリカ。ホテル暮らしを満喫している箱入り娘のカリーは、離婚調停中の友人セルマのたっての願いで夫アラン宅にメイドとして潜入するハメになる。別の男性宛のセルマの手紙がアランの手に入ってしまったので、盗み出して欲しいと言うのだ。ところが大した事ないと言われたメイド役は、箱入り娘にとっては苦労の連続。しかもアランにはあっという間に正体がばれてしまう。それでも性懲りもなく手紙を探して夜中にウロウロしていると、屋敷内では不穏な行動が横行している事に気付く。そのうちの一つ、アランの兄ジョージが夜中に食堂で誰かと待ち合わせしているのを見かけたカリーは、翌朝、全く同じ状態で座っているジョージを見つけた。一つ違っていたのは、ジョージは殺されていたのだ!連続殺人の幕が切って落とされたのだった・・・・。

コニス・リトルの「記憶をなくして汽車の旅」が結構面白かったので続けて読んだ(レビューは続けられなかったが汗)。同様の雰囲気を持ったユーモア・ミステリー・ライトノベルだ。こちらも読んでいる間はなかなか楽しく、おきゃんなカリーに引っ張られてどんどん読み進められる。
またこれまた前作同様ながら、ロマンティック・コメディー的要素も絡まって、アラン、弟のロス、若手刑事のビルなどと恋の鞘当てが演じられる。この辺りも意外と楽しいのだ。
原書の発刊が1941年という事で、世情が暗くなって行く中だからこそ、こういった楽しい本が求められたのかもしれない。また、作者が姉妹だからこそ、というのもあるだろう。

前作同様、時間つぶしにもってこいの作品なんで、気軽に手に取ってみてください。さて、第三弾はあるかな〜?


夜ふかし屋敷のしのび足 (創元推理文庫 M リ 5-2)

夜ふかし屋敷のしのび足 (創元推理文庫 M リ 5-2)

  • 作者: コニス・リトル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 文庫

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悪魔はすぐそこに [小説レビュー]

悪魔はすぐそこに「悪魔はすぐそこに」(D・M・ディヴァイン) 創元推理文庫

1966年の作品。
ハードゲート大学で数学科講師を務めるピーター。父のデズモンドは同大学の著名な教授だったが、8年前の醜聞から精神を病み亡くなっていた。ピーターは傑出した父との比較に悩みながらも同大学の経済学科講師で美しいルシールと婚約し、平穏な日々を送っていた。
しかし、父の友人である経済学科上級講師のハクストンが横領の疑いで免職されそうになったところから、事件の記憶が呼び覚まされる。ハクストンが醜聞に関して脅迫めいた発言を審問委員会で行った後、不可解な状況で死ぬと、強盗事件が起き、そして殺人が。容疑者は8年前から大学に在籍している教授たちに絞られるのだったが・・・。

『パズル小説の傑作』というふれこみに惹かれて買った本作。確かに読み終わって『ナルホド』という感じ。
元々1900年代前半は、前世紀との狭間の傑作であるホームズ譚を引きずってパズル小説全盛期だった訳だが、この60〜70年代は徐々に小説としての深みが求められ、パズルもやり尽くされた感から推理小説全体が舵を切って行く時代に当たる。本作もパズル小説の本質を残しつつ、意外にも現代的な雰囲気を感じさせてくれる。まぁ、新訳だから、という部分も大きいかもしれないけどwいずれにしても今読んでも余り前時代的な感じはしないので、自然に読める。

パズル小説の真髄はミスディレクションにある訳だが、今作も色んな方向に引っ張っていってくれる。ただ、作中で犯人の可能性大と言われる数人がいかにも脇役然としていて犯人と思えないのがちょいと残念。主要登場人物内ではおおよそ4人くらいが犯人候補として残って行くと思うが、その段階で一つのミスディレクションは底が割れてしまっている。ここももう少し引っ張ってくれてれば、本当に面白かったんだけどなぁ。
ある意味クリスティーのある作品と同じようなトリックなんだけど、それをかなり洗練された形に落とし込んでいて巧い。40年の推理小説の進化を見る思いです(笑)。

水準以上の作品だし、古典として構えずとも読める作品なので、皆さんにお薦め出来ます。ディヴァインの作品を順次発刊予定らしいので、続けて読んでみたいと思っています。


悪魔はすぐそこに (創元推理文庫 M テ 7-1)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫 M テ 7-1)

  • 作者: D.M.ディヴァイン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/09/22
  • メディア: 文庫

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記憶をなくして汽車の旅 [小説レビュー]

519XPgOUaAL._SS500_.jpg「記憶をなくして汽車の旅」(コニス・リトル)創元推理文庫

どうやらわたしはクレオ・バリスター。どうやらというのは、乗り込んだ列車内のある事故で記憶をなくしてしまったからだ。その事故から目を覚まして、『そのうち思い出すだろう』とついつい流れに任せてみれば、どうやら自分はオーストラリアの横断列車の旅をしているらしい。同行していた友人は同じ事故で怪我をして病院行き。そして途中で親戚だという一族や、許婚者と名乗る男と合流。いったいどうなることやら、と思っていた矢先、旅で知り合った女性が首を切られて死んでいるのを発見してしまった!

1940年代のオーストラリア横断鉄道の車内を舞台に展開するミステリー。ライトノベルとしては悪くない。ミステリとしては少し展開が簡単だけどw サラサラと読めて、肩の凝らない作品。
一人称なので、主人公に感情移入出来るかが結構重要。作品が書かれたのが1944年という事で、割としっかりとした女性が主人公なので、共感は得易い気がする。ちなみに大戦中ではあるが、別に戦争は一言も出て来ない。
徐々に思い出されて来る主人公の記憶と、殺人事件の謎の解明が平行して描かれ、最後はかなりハッピーエンド。読後感も爽やかで、だれが読んでも後悔しない作品という感じ。初版がまだまだ出回ってる(つまり売れてない)ので、目についたら読んであげてください(笑)。

ちなみに原題は「GREAT BLACK KANBA」。カンバというのは大きい蛇のことらしい。「巨大な黒い蛇」なんてタイトルではなんだか分からないけど、日本語の題もどうなのよ?実はコニス・リトルの作品は、必ず「BLACK」が付く題名らしく、その辺りの洒落っ気は全く感じられないタイトルになってしまいましたね・・・・。これも一目で内容が分からないと手を出してくれないと言う現代日本人の性癖を象徴しているのかな?


記憶をなくして汽車の旅 (創元推理文庫 M リ 5-1)

記憶をなくして汽車の旅 (創元推理文庫 M リ 5-1)

  • 作者: コニス・リトル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 文庫

今年発刊した邦訳第2作。こちらも今読んでます。
夜ふかし屋敷のしのび足 (創元推理文庫 M リ 5-2)

夜ふかし屋敷のしのび足 (創元推理文庫 M リ 5-2)

  • 作者: コニス・リトル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 文庫

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漂う殺人鬼 [小説レビュー]

「漂う殺人鬼」(ピーター・ラヴゼイ) ハヤカワ文庫

ピーター・ダイヤモンド警視シリーズ。毎回趣向を変えて来るこのシリーズだが、今回は近隣の警察署と連携を取っての捜査だ。割と警察小説してる印象w
身なりの良い30前後と思われる女性の死体が砂浜で発見される。彼女は混雑している夏の砂浜で、日に当たっているところを、だれにもみられずに殺されたらしい。そんな事が可能なのか。事件の担当となったボグナー警察署のヘン・マリン主任警部は、状況を確認する為に目撃者と思しき家族を探すが、マスコミを通じて呼びかけても何故か名乗り出ない。
なかなか前進しない捜査の中で、失踪人リストから身元が判明する。バース在住のプロファイラーらしいのだが、現在重要な事件を抱えていたらしい。ヘンはバース警察署のダイヤモンド警視と連携して懸命に捜査の進展を図るのだったが・・・。

いやー、「フロスト気質」から続けて読んだもんで、なんだかゴチャゴチャになってしまった(汗)。でも読み応えあって面白かったです。まぁラヴゼイですから、間違いないですw
フロスト警部が変化球の乱れ球オンパレードだとすると、こちらはもう少しマトモな直球主体の組み立て技巧派。どちらも複数の事件が絡んでいるが、こちらにはちゃんと主になる事件があって、徐々に枝葉が刈られて行って最後に大団円が来る。
それにしても前作で最愛の妻・ステフが亡くなり、ピーター・ダイヤモンド警視の周りも急に賑やかになって来た。今回ピーターと双璧を成すヘン・マリン主任警部、新人刑事のインゲボルグ・スミス、そして命を狙われる元ポップスターのアナ・ヴァルプルギス。これからはそういうお楽しみもあるのかなぁ。無骨なピーターじゃ無理かw

しかし、今回の犯人にはビックリした。そうか、そっちかよ!って感じw ワタシはすっかり別のやつを想像してたので、モノの見事にやられました。いやー、こういうのがやっぱり楽しいなぁw


漂う殺人鬼 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 3-24 ダイヤモンド警視シリーズ)

漂う殺人鬼 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 3-24 ダイヤモンド警視シリーズ)

  • 作者: ピーター・ラヴゼイ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/09/05
  • メディア: 文庫

この後、こちらも読み終わってしまった。いや、やっぱり短編集は早い!タイトルはフロストシリーズだが、ダイヤモンド警視モノも載ってます。間もなくレビュー書きます。
夜明けのフロスト (光文社文庫)

夜明けのフロスト (光文社文庫)

  • 作者: R・D・ウィングフィールド
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/12/08
  • メディア: 文庫

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フロスト気質(上・下) [小説レビュー]

「フロスト気質(上・下)」(R・D・ウィングフィールド)

ハロウィーンの夜から始まる事件、事件のオンパレード。デントン市警は忙しい事この上ない。ゴミの山から身元不明の少年の死体が発見されたかと思えば、幼児を狙った傷害事件が多発。そこに少女誘拐事件やらこそ泥の相談やら腐乱死体やらが絡み、遂には母子4人殺害事件まで。担当を超えて、その全ての事件の解決に勤しむのは、休暇返上でろくに寝ずに働き続ける我らがジャック・フロスト警部!今日も煙草と下品なジョークを活力に精力的に働き続けるのだった。

という訳でwジャック・フロスト警部シリーズ最新刊。遂に上下巻に分冊されてしまった大長編ではあるが、とにかく無駄な話しはほとんどなく、フロスト警部は事件を追って追って追いまくるので、決して飽きる事はない。複数の事件の捜査が平行して行われ、こちらの捜査が滞ればあちらの事件で進展があるという力技で、グイグイ引き込まれてしまうのだ。そしてフロストのキャラクターも激しい。事件の聞き込みに行く先ではいい女を見れば妄想爆発、下ネタの開陳となり、署長の秘書には隙を見てはあらぬところに指を突き立てる(いわゆる浣腸)w 署長や同僚の厳重な注意は受け流し、事件を解決しても書類作成をしたくないが為に手柄は他人にさっさと明け渡す。それでいて情に流されるところは流されてしまう。フロストの下品なジョークをニヤリと出来る人ならば、憎めないどころか、愛さずにいられないキャラクターだ。

そして今回はなかなかに華もある。脇に従えるのは勝ち気で出世欲もある女性部長刑事。普段は堅くてダサイ格好をしているが、実は意外といい女。物語の最初は嫌な感じで出て来るが、いつの間にやらフロストペースに巻き込まれてそれなりに愛すべきキャラクターになるのだった。それ以外にもフロストのガールフレンドが出て来たり、偶然出会った昔の娼婦には憎からず思われたりで、エラい汚い格好をしているオヤジのくせに今回は法外なモテようだw

推理小説としては意外と先が読めてしまうので、今イチではあるのだが、とにかくフロスト警部を追いかけているだけで楽しい気分になれる作品。下品に耐性がある人は、厚みに負けずに是非ご一読をw


フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

  • 作者: R.D.ウィングフィールド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 文庫
フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)

まだフロストシリーズを読んだ事がない方はシアワセですね!これから秋の夜長を充分に楽しめるんですから。
クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

  • 作者: R.D ウィングフィールド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1994/09
  • メディア: 文庫
フロスト日和 (創元推理文庫)

フロスト日和 (創元推理文庫)

  • 作者: R・D・ウィングフィールド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 文庫
夜のフロスト (創元推理文庫)

夜のフロスト (創元推理文庫)

  • 作者: R・D・ウィングフィールド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2001/06/08
  • メディア: 文庫

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パニック! [小説レビュー]

「パニック!」(ジェフ・アボット) ヴィレッジブックス

ドキュメンタリー映画監督のエヴァンは、早朝に急な電話で起こされる。それは母からで、理由も言わずにとにかくすぐに実家に帰ってこいと言うのだ。納得出来ないものの、ただならぬものを感じて同意し、急いで車を飛ばして帰った実家で待っていたのは、一目で他殺と分かる母の死体だった。悲観に暮れるエヴァンをも襲う殺人者。しかし、すんでのところで謎の人物に助けられた。その男はガブリエルと名乗り、エヴァンの母から保護を依頼されていたと言う。しかし信じられないエヴァンはガブリエルからも逃げ、警察に通報するのだった・・・・。

いや、面白かった。なかなかに厚手の本なのだが、ノンストップ・アクションスリラーといった趣きで、次々と新しい局面が現れて来て飽きさせない。次は?次は?と物語と謎を追っていくうちに、最初は不明だった全体像が、おぼろげに形を見せていくという趣向だ。
ジェフ・アボットは、図書館長ジョーダン・ポティートシリーズ4冊、お気楽判事モーズリーシリーズ3冊と、基本的にライトな推理小説を書いて来た作家だ。本作は現在のところ唯一のノンシリーズであり、推理小説というよりサスペンス小説となっている。章立てが日にちになっており、9日間という非常に短期間の話を描いている。そしてその短期間に主人公は、平凡な人間だと思っていた自分、両親、恋人が、実は見かけと全く違う人間だった事を知り、大切な人の命を守る為に必死で周囲で起こる事と戦っていくうちに自らも劇的に変わっていくのだ。
ジェフ・アボットの従来のシリーズは、主役は人なつこくて愛すべきキャラクターで、楽しいけれどもいささかのんびりとした(悪く言えば間延びした)作品といった印象だった。確かに前作のモーズリーシリーズ「逃げる悪女」は従来路線よりサスペンスフルな展開で今作の印象に近付いていたが、今作では一気に突き抜けて、スピーディーで畳み掛けるような展開となっている。これはちょっと驚き。ジェフ・アボットにこんな作品が書けるとは・・・・。この感触は、ワタシ的に大絶賛しているハーラン・コーベンに近いものがあった。ジェフ・アボットも化けたなぁ(爆)。

ハーラン・コーベンもシリーズ物の再開が待ち遠しい反面、ノンシリーズの面白さにそちらへの期待もあって悩ましいところなのだが、これでジェフ・アボットも同様の状態となってしまった。図書館長シリーズなんてエラい中途半端で止まって10年経ってしまったので、一刻も早く再開して欲しいところなのだが、ノンシリーズでこれだけの快作を出されてしまうと、それも期待してしまう。うーむ・・・・。


パニック! (ヴィレッジブックス F ア 9-1)

パニック! (ヴィレッジブックス F ア 9-1)

  • 作者: ジェフ・アボット
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2008/07/19
  • メディア: 文庫

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