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パニック! [小説レビュー]

「パニック!」(ジェフ・アボット) ヴィレッジブックス

ドキュメンタリー映画監督のエヴァンは、早朝に急な電話で起こされる。それは母からで、理由も言わずにとにかくすぐに実家に帰ってこいと言うのだ。納得出来ないものの、ただならぬものを感じて同意し、急いで車を飛ばして帰った実家で待っていたのは、一目で他殺と分かる母の死体だった。悲観に暮れるエヴァンをも襲う殺人者。しかし、すんでのところで謎の人物に助けられた。その男はガブリエルと名乗り、エヴァンの母から保護を依頼されていたと言う。しかし信じられないエヴァンはガブリエルからも逃げ、警察に通報するのだった・・・・。

いや、面白かった。なかなかに厚手の本なのだが、ノンストップ・アクションスリラーといった趣きで、次々と新しい局面が現れて来て飽きさせない。次は?次は?と物語と謎を追っていくうちに、最初は不明だった全体像が、おぼろげに形を見せていくという趣向だ。
ジェフ・アボットは、図書館長ジョーダン・ポティートシリーズ4冊、お気楽判事モーズリーシリーズ3冊と、基本的にライトな推理小説を書いて来た作家だ。本作は現在のところ唯一のノンシリーズであり、推理小説というよりサスペンス小説となっている。章立てが日にちになっており、9日間という非常に短期間の話を描いている。そしてその短期間に主人公は、平凡な人間だと思っていた自分、両親、恋人が、実は見かけと全く違う人間だった事を知り、大切な人の命を守る為に必死で周囲で起こる事と戦っていくうちに自らも劇的に変わっていくのだ。
ジェフ・アボットの従来のシリーズは、主役は人なつこくて愛すべきキャラクターで、楽しいけれどもいささかのんびりとした(悪く言えば間延びした)作品といった印象だった。確かに前作のモーズリーシリーズ「逃げる悪女」は従来路線よりサスペンスフルな展開で今作の印象に近付いていたが、今作では一気に突き抜けて、スピーディーで畳み掛けるような展開となっている。これはちょっと驚き。ジェフ・アボットにこんな作品が書けるとは・・・・。この感触は、ワタシ的に大絶賛しているハーラン・コーベンに近いものがあった。ジェフ・アボットも化けたなぁ(爆)。

ハーラン・コーベンもシリーズ物の再開が待ち遠しい反面、ノンシリーズの面白さにそちらへの期待もあって悩ましいところなのだが、これでジェフ・アボットも同様の状態となってしまった。図書館長シリーズなんてエラい中途半端で止まって10年経ってしまったので、一刻も早く再開して欲しいところなのだが、ノンシリーズでこれだけの快作を出されてしまうと、それも期待してしまう。うーむ・・・・。


パニック! (ヴィレッジブックス F ア 9-1)

パニック! (ヴィレッジブックス F ア 9-1)

  • 作者: ジェフ・アボット
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2008/07/19
  • メディア: 文庫

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