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悪魔はすぐそこに [小説レビュー]

悪魔はすぐそこに「悪魔はすぐそこに」(D・M・ディヴァイン) 創元推理文庫

1966年の作品。
ハードゲート大学で数学科講師を務めるピーター。父のデズモンドは同大学の著名な教授だったが、8年前の醜聞から精神を病み亡くなっていた。ピーターは傑出した父との比較に悩みながらも同大学の経済学科講師で美しいルシールと婚約し、平穏な日々を送っていた。
しかし、父の友人である経済学科上級講師のハクストンが横領の疑いで免職されそうになったところから、事件の記憶が呼び覚まされる。ハクストンが醜聞に関して脅迫めいた発言を審問委員会で行った後、不可解な状況で死ぬと、強盗事件が起き、そして殺人が。容疑者は8年前から大学に在籍している教授たちに絞られるのだったが・・・。

『パズル小説の傑作』というふれこみに惹かれて買った本作。確かに読み終わって『ナルホド』という感じ。
元々1900年代前半は、前世紀との狭間の傑作であるホームズ譚を引きずってパズル小説全盛期だった訳だが、この60〜70年代は徐々に小説としての深みが求められ、パズルもやり尽くされた感から推理小説全体が舵を切って行く時代に当たる。本作もパズル小説の本質を残しつつ、意外にも現代的な雰囲気を感じさせてくれる。まぁ、新訳だから、という部分も大きいかもしれないけどwいずれにしても今読んでも余り前時代的な感じはしないので、自然に読める。

パズル小説の真髄はミスディレクションにある訳だが、今作も色んな方向に引っ張っていってくれる。ただ、作中で犯人の可能性大と言われる数人がいかにも脇役然としていて犯人と思えないのがちょいと残念。主要登場人物内ではおおよそ4人くらいが犯人候補として残って行くと思うが、その段階で一つのミスディレクションは底が割れてしまっている。ここももう少し引っ張ってくれてれば、本当に面白かったんだけどなぁ。
ある意味クリスティーのある作品と同じようなトリックなんだけど、それをかなり洗練された形に落とし込んでいて巧い。40年の推理小説の進化を見る思いです(笑)。

水準以上の作品だし、古典として構えずとも読める作品なので、皆さんにお薦め出来ます。ディヴァインの作品を順次発刊予定らしいので、続けて読んでみたいと思っています。


悪魔はすぐそこに (創元推理文庫 M テ 7-1)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫 M テ 7-1)

  • 作者: D.M.ディヴァイン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/09/22
  • メディア: 文庫

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