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待ちうける影 [小説レビュー]

4174EJS94AL._SS500_.jpg「待ちうける影」(ヒラリー・ウォー)早川推理文庫

精神障害が治ったとして、オーヴィル・エリオットが精神病院から解放された。彼は9年前、女性3人をレイプ・殺害したが、精神障害として無罪になっていたのだ。最後に殺された女性の夫であるハーバート・マードックは、今では別の女性と結婚し、子供も二人設けて平穏な生活を送っていた。しかし彼は当時、殺された妻の死体を切り刻み、その血を体に塗り付けているオーヴィルを発見して発砲し、オーヴィルの性器を破壊した事で復讐の的になっていた為、オーヴィルが治ったという事が信じられなかった。家族が危ないとして警察に何度も訴えるが取り合ってもらえない上、守るはずの家族との意識の違いから徐々にギスギスしてしまう。ハーバートの言う通り、オーヴィルは復讐を遂げに現れるのか、それとも・・・・。

以前、「ヒラリー・ウォーの作品を読んでます。」として、長編6冊を乱暴にミニ・レビューしたがwその際も触れた今作をようやく読み終わった。ずいぶん時間がかかったのは例の件の心理的なものもありますが、今作の設定を一読しただけでワタシのニガテなタイプの作品だと思ったから。

だいたいストレスの溜まる心理戦みたいな作品はどうもダメなのだ。読書という行為自体を楽しみたい性分の上、何度も書いているように(主に)主人公に感情移入して物語に没入するという鑑賞方法のため、主人公が極度の緊張を強いられる物語はどうしてもニガテ。そのお陰で今作もなかなか読み出せずに放置されていたのだった。(そういう意味でも探偵小説は物語と主人公との間に一定の距離感があるので、ワタシには読みやすいのだ。)

ただ、溜めていた未読本がかなりなくなってしまい、いよいよこれを読むしかない、となった事で今回やっと読んだ次第(爆)。

以前のミニ・レビューで紹介した6冊は全て推理小説の枠に収まる作品だったが、今作は完全なサスペンスで、細かな謎は出て来るが基本的に本筋に謎はない。ネタバレにもならないと思うので書いてしまうが、オーヴィルは当然ハーバートへの復讐の機会を狙っている(それでなければ物語にならんw)わけで、それが成就するのか逆に阻止するのかでハラハラドキドキするのを楽しむ作品というわけだ。

で結論を書いてしまえば、これはこれで非常に楽しめたのは間違いない。途中まではワタシの最も苦手な展開だったが、そこを乗り越えて物語が動き出すと、逆にやめられない止まらない状態になって結末まで一直線。確かに最新のサスペンスであるジェフ・アボットの「パニック!」やハーラン・コーベンの「イノセント」と比較すれば牧歌的と言えるかもしれないが、この二作はワタシ的にはサスペンス小説の白眉と称賛したい作品なので比較するのがカワイソウかもしれない(笑)。

さて、ハヤカワ文庫のヒラリー・ウォー作品は読破してしまったが、どうやら他文庫から出版されている作品は絶版になっている模様。再販が掛かるのは望み薄みたいなので、古本屋で探すかなぁ。それも難しいかもなぁ・・・・。


待ちうける影 (創元推理文庫)

待ちうける影 (創元推理文庫)

  • 作者: ヒラリー ウォー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 文庫

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tomoart

>エコピーマンさん
nice!ありがとうございます。こちらはマジで怖いです(汗)。主人公が自ら孤立していく過程が結構イタい。好みが分かれるかもしれません。
by tomoart (2010-08-08 19:15) 

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