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横溝正史読本 [小説レビュー]

横溝正史読本「横溝正史読本」(小林信彦) ※角川文庫

思った以上に古い本である。最後に付いている年表などには加筆修正したとの事だが、一番ボリュームがある筆者と横溝正史本人との対談や、江戸川乱歩などの作品評論など、今の時代にいかほどの人間が読むのか分からない内容が続いている。
ま、この本を手に取るような人間は、横溝作品のファンに決まってるのだから、前述のような非難はあたらないかもしれない。かく言うワタシも十二分に楽しむ事ができたw なんと言っても前半の横溝本人の語る様々な歴史が、イコール日本の探偵小説の近代史となっていて興味深い。日本の作家はもちろん、当時海外の作家を日本ではどう読まれていたか、どう評価されていたか。出版界の状況含め、非常に狭い世界でやっていたのだなぁ、というのがよくわかる。また、横溝含め同時代の作家たちが、往々にして執筆のアイデアのいくつかを海外作品から拝借したなど、今では考えられないおおらかな時代の一端も感じられる。この辺り、真剣に受け止めて目くじら立てる人もいるかもしれないが、当時の時代の空気感だと思って微笑ましいエピソードと捉えた方が良いだろう。

その後に付いてくる様々な人の筆による横溝作品の評論は、今となっては資料価値以外のものはないように思うが、当時いかに横溝作品が衝撃を持って受け入れられたかの一端が垣間見えるのは興味深い。
ワタシとしては、未だ読んでいない横溝作品への読書意欲の喚起と共に、年表から発表年順の作品一覧を作りたくなった。思った以上に楽しい本だった。


横溝正史読本 (角川文庫)

横溝正史読本 (角川文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/09/25
  • メディア: 文庫

横溝作品に触れたくなったら、まずはこの辺りからいかが?金田一耕助初登場作品です。「〜読本」でもさんざん出てきますw
本陣殺人事件 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

本陣殺人事件 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1973/04
  • メディア: 文庫

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コメント 2

あきら

横溝ファン(というか金田一シリーズ好き)の癖にこの本は未読でした。
やっぱり読むべきだったか~。参考になりました。
by あきら (2009-03-10 01:13) 

tomoart

>あきらさん
ども。nice!&コメントありがとうございます。
そうですね、金田一系の作品をそこそこ読んでれば、この本は充分楽しいと思います。
ワタシは特に、昔の海外推理小説が好きで、クリスティーもほとんど読みましたし、ヴァン・ダインも大好きなんですよ。その辺りの話も対談で出て来るのがまた興味深かったりしたんですけど。(もう一方の雄、エラリー・クイーンは肌に合わなくて読んでないんですけど。)
いずれにしても、横溝正史という人物や、戦前戦後の日本の推理小説の歴史を紐解くには絶好の本ですので、推理小説や出版に興味があれば、お薦め出来る本だと思います。
by tomoart (2009-03-10 03:19) 

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