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ウォッチメン [洋画レビュー]

WatchmenPosterFinal.jpg.jpeg「ウォッチメン」(監督:ザック・スナイダー)

キーン条例によってヒーロー活動が禁止されていた1985年のある日、ニューヨークである男が殺された。男はこの時代に数少ない、政府が認めてヒーロー活動を続けていた「コメディアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)」。ヒーロー全盛時代には「ウォッチメン」の一員として、主に戦場で活躍した男だった。最近ではヒーローに対する世間の風当たりも強く、コメディアンの死も警察では物取りの犯行といった一般的な捜査しか行われない。しかし、その死に不信感を抱き、一人で捜査を始める者がいた。やはりウォッチメンのメンバーだった「ロールシャッハ(ジャッキー・アール・ヘイリー)」だ。非合法にヒーロー活動を続けている彼は、コメディアンの死を『ヒーロー狩り』と断定。同じくウォッチメンのメンバーだった「ナイトオウル(パトリック・ウィルソン)」「オジマンディアス(マシュー・グード)」「Dr.マンハッタン(ビリー・クラダップ)」「シルクスペクター(マリン・アッカーマン)」に警告を発する。
一方、この時代、米国とソ連の緊張状態は極限に達しており、明日にも核戦争が始まってもおかしくないだろうという情勢。ウォッチメンの活躍によりベトナム戦争に勝利し、5期目の大統領任期を迎えているニクソンの頼りは、全ての事象を原子レベルでコントロール出来る超人・Dr.マンハッタンただ一人。核ミサイルを撃ち込まれても、彼一人で止める事が出来る『抑止力』なのだ。しかし、その人間離れした意識はどんどん認識のレベルを拡大しており、国のレベルをとうの昔に超えていたのだ。
不安な情勢を受けて人心は荒廃、街中はどこも不穏な空気が満ちている。いったいコメディアンを殺したのは誰なのか。ウォッチメンのメンバーたちの行く末は、そして核戦争は勃発してしまうのだろうか・・・・。

やっぱりスゴかったですよ、「ウォッチメン」!予告でも書いた通り、こいつはヒーロー映画でもSF映画でもアクション映画でもない。ヒーローという職業に従事・引退し、屈折した性格のキャラクターたちが織り成す、上質なサスペンス・ドラマだ。いくつかの謎を追って物語は進み、その合間にキャラクターたちの(屈折していく)過去を紹介していく形式。

それにしてもこの作品が素晴らしいのは、キャラクターとストーリーが不可分な事。Dr.マンハッタンを始め、それぞれの(ヒーローであるという前程含め)設定があるからこそ、このストーリーは成立する。個々のキャラクター設定を上手く使って物語とリンクさせているのが、対象が非一般人だからこそよく分かる。

主要キャラクターの描写も駆け足になるかと思いきや割としっかり描写されていて、キャラクターたちの行動がおかしく感じられるようなところもない。特に中心となるロールシャッハ、Dr.マンハッタン、シルクスペクターに関しては、現在の苦悩に加えて過去の物語も語られ、思った以上に感情移入させてくれる。
この辺りの見せ方は本当に上手い。要はそのキャラの、ストーリーに必要不可欠なバックグラウンドだけを観客に見せ、それ以外は実はほとんど見せていないのだ。そのさじ加減が絶妙なればこそ、描かれている以上にそのキャラについて知っているような錯覚を覚えてしまうのだ。お陰でナイトオウルなどは損をしている。彼は非常に分かり易い性格で、観客として感情移入し易いキャラなのだが、そのせいでバックグラウンドを描く必要が生じなかったのだろう。主要キャラの中で唯一、ほとんど過去が描かれない。でも当然狙いがハッキリしてるから、描かれない事によるストレスはないのだが。

それにしても今作のキャラクターたちは屈折している。基本的にヒーロー活動が制限されているので素顔で生活しているのだが、皆、仮面を被った姿(=ヒーロー時)こそ本当の自分になれる、という演出がされている。これは原作者を一にする「Vフォー・ヴェンデッタ」に通じる発想だ。アラン・ムーア自身が好むと好まざるとに関わらず「もはや素顔をさらして歩ける世界でない」というVの言葉の示す方向に、この「ウォッチメン」もあるのかもしれない。

うっかりワンシーン見逃すと、ラストのオチが理解出来なくなってしまい、そうなると全編に入るロールシャッハのモノローグの意味も見えなくなってしまったりする。162分をかけて、重苦しく、切ないラストへと向かっていく、その全てを見逃さないように、心して観に行くべし!!

(レビューpart2書きました。こちら。)


上記の通り、「ウォッチメン」と同様にアラン・ムーア原作の作品。アラン・ムーアはデキに怒ってるらしいけど。まぁ、自分の作品はコミックでしか表現出来ない世界を描いているのだ!という自負を持ってるらしいので、どんなに出来が良い作品でもバッサリなんでしょうw
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レビューはこちらであります。既に2年半前のレビューかぁ。

きっとこの作品と比較されちゃうんでしょう。ワタシもレビュー予告で引用しちゃいましたけど。でも方向性は全く違うんですよね。あくまでヒーロー映画の枠組みの中でリアルでハードな「ダークナイト」、片やサスペンスドラマの登場人物たちが(たまたま)ヒーローな「ウォッチメン」。ある意味では両極端な作品なのです。
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レビューはこちら


スーパーヒーローの活躍を政府が制限するっていう発想は、米国ではポピュラーなんでしょうか?考えてみればこの作品も同様の設定ですね。作品の方向性は全く違うけどw
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ウォッチメンたちは、Wiki情報によると原作では基本的に常人らしいのだが、映画では若干超能力を持っているように描かれているようだ。一番顕著なのはオジマンディアスの超スピード。また、ナイトオウルとシルクスペクターも、二人で数十人の屈強な男を相手に怪我一つせずに撃退している。その辺りのさじ加減を、ザック・スナイダーはどう思っていたのだろう・・・・。
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  • メディア: 単行本

※2009/08/12追記
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tomoart

>COROさん
初めまして。nice!ありがとうございます。
COROさんは「ウォッチメン」に期待されている一人でしょうか?だったら多分、期待は裏切られないでしょうw 楽しみにご覧になってください。
by tomoart (2009-03-25 02:20) 

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