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テクノポリス21C [邦画レビュー]

ate0064k_l.jpg「テクノポリス21C」(監督:松本正志)

近未来が舞台。地方警察に勤務する25歳の壬生京介(安原義人)は急に転属を申し付けられる。転属先は特捜マシーン隊と呼ばれる“テクノポリス”。最新のマシーンを使った凶悪な犯罪が横行する未来都市センチネル・シティに出来た、全く新しい独立組織だった。テクノポリスに集まった京介、風吹エレナ(滝沢久美子)、香坂かおる(池田勝)は部長の鳴海吾郎(内海賢二)のもと、新たに開発された“テクロイド(ロボット)”のブレーダー(大林隆介)、スキャニー(島津冴子)、ビゴラスとコンビを組み、凶悪犯罪に立ち向かっていく。
ある日、敵国の策略により強奪された最新型の戦車・テムジンが、空輸中の輸送機からセンチネル・シティに落下。街を蹂躙していくが、軍部の妨害に遭いながらもテクロイドたちのコンビネーションによって無事に捕獲された。しかし犯人たちが引きずり出されたテムジンは、何故か急にオートパイロットで動き出す。調査のために車内に入ったエレナと共に。そこには軍がひた隠しにしている“コマンドII”なるシステムの介入があったのだ・・・・。

technopolice21c1.jpg超マイナー・カルト・アニメ映画w「テクノポリス21C」(1982年)です。さて、いったいどれだけの人が知ってるんでしょうか・・・・。テレビアニメを目指して企画がスタートしたのですが、途中で頓挫。紆余曲折をへて、当初のパイロットフィルムが超限定的に劇場公開されました。アートミックとスタジオぬえがガッチリ手を組んで製作しただけに、スゴいスタッフが勢揃いしながらも、だいぶ無茶なものになってますw

スタッフの一例をあげますと、メカデザインは「宇宙の戦士(ハインライン)パワードスーツデザインで名高いスタジオぬえ宮武一貴と、一部、最近では監督業での活躍が目立つが、「超時空要塞マクロス」バルキリーのデザインで一世を風靡した河森正治が担当し、キャラクターデザインは今やイラストレーターからファインアート的に売れ過ぎな感もある天野喜孝で、美術設定はタツノコでの「ガッチャマン」からサンライズロボット作品全般で大活躍の中村光穀。脚本には松崎健一(ぬえ)、星山博之(ガンダムメインライター)、山本優(J9シリーズ)と「機動戦士ガンダム(ファースト)」経験者が参加し、特撮作品を中心に活躍していた佐々木守も監修したようです。音楽は今では「おくりびと」も担当した久石譲が軽快なBGMを提供しています。

そうなんです。以上のスタッフはスゴいんですよ。主に立ち上げの時、本当に力が入っていたんでしょうねぇ。メカに限らず設定はかなり突っ込んで作っています。ところがテレビアニメとしての企画が頓挫すると、もう後はメロメロです(汗)。何せ今みたいに発表の場は多くありません。レンタルビデオ店黎明期で、OVA(ビデオ発売用オリジナルアニメ)として初めて「ダロス」が出るのは翌年の事。当然CSやらBSやらの影も形もありません。アニメが深夜枠で放送される時が来るなんて想像もできない時代です。企画は一気に萎んでしまいます。しかし、とにかく完成させたかったんでしょうねぇ。致し方なく格安で受けてくれる(?)アニメ制作プロダクションに発注し、出来たのが本作、といったところでしょう。(この文章、後半はほとんどワタシの想像です・・・)

technopolice21c2.jpgだからアニメ作品としては非常にバランスが悪いんですよ。ぬえデザインのメカたちは設定画だけを見れば非常にスタイリッシュでカッコいいんですが、元々実写特撮でやる事も考えていたらしく、そういった意味からもアニメメカとしては当時異例の線の多さ。今なら全てCG描写でしょうが、当然今作では手描きですから、大変な事になってます。しかも戦車が何台も出てきて縦横無尽に突っ走るという話ですからねぇ。戦車って無限軌道なので滅茶苦茶描き辛いんですよね。それを定位置回転とかさせようとするもんだから、作画の力量のなさが如実に表れます(汗)。テクロイドたちもあんまり動きませんし、描く人によって少しマシだったり全然ダメだったり。肝心のプロポーションがダメダメな場合が多いのも、描いてる人がディテールに気が行ってしまって描き切れていないことの証拠でしょうね。

それよりは人間のキャラクターの方が作画はマシです。天野氏の描くキャラはメカとは全く逆で線が少ない。だから自分解釈で描けば結構マトモに描けるんですよね。ただ、だからこそ場面場面で顔がてんでバラバラなのがイタい(爆)。作画監督の手が行き届かなかったんでしょう。というかこの作品、作画監督はクレジットされているけど、ホントに修正作業してるのか?影の付き方などもみんな違うんだよなぁ。

お話自体は結構無茶だしダイジェスト感もあって、やっぱりせいぜいがパイロットフィルムだよなぁ、とは思うものの、作画を別とすればキャラクターは皆それなりに魅力的(ステロタイプな印象は拭えないが・・・)だし、メカなんかも今のクオリティで作画されれば化けもの番組になるのは必定。そう、リメイク流行の昨今、これ、どこかでこのまんま作り直してくれないかなぁ・・・。一年とは言わないから半年くらいのスパンでテレビシリーズとか。でもきっと、スタジオぬえがこんな古い企画を今さら作りたくないって言うんだろうなぁ・・・・。


おもちゃ企画頓挫の資料集らしいですw ぬえは企画会社だからそういう話には事欠かないんでしょうね。イラストを描いた加藤直之氏が著者としてクレジットされていますが、デザインの大半は宮武氏が起こしたようです。アマゾンのレビュー読むと、『メカデザイナー志望者必読!』だそうですw 最近ワタシもちょっと欲しくなってきました。
機甲天使ガブリエル

機甲天使ガブリエル

  • 作者: 加藤 直之
  • 出版社/メーカー: ラピュータ
  • 発売日: 2008/11/05
  • メディア: 単行本

これ、「ロボテック」関連の記事の時にさんざん書きましたけど、多分80年代メカデザインのNo.1ヒット作でしょう。(あ、ガンダムは70年代ですから爆)
超時空要塞マクロス オリジン・オブ・バルキリー バルキリーVF-1J (一条輝機)

超時空要塞マクロス オリジン・オブ・バルキリー バルキリーVF-1J (一条輝機)

  • 出版社/メーカー: バンダイ
  • メディア: おもちゃ&ホビー

天野喜孝よ、どこへいく・・・・といった気になる最近の動向(汗)。一介の挿絵画家の時の天野氏の絵が好きでした・・・・。
天野喜孝全版画集

天野喜孝全版画集

  • 作者: 天野 喜孝
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2002/04/10
  • メディア: 大型本


※追加のモノクロイラスト2枚は、tomoartイラストです・・・・。
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コメント 6

織野

テクノポリス21C、今、見終わりました!

前から見たかったのですが、DVD、ビデオも見つからず、あきらめていたことろ、たまたまyoutubeで見つけて、さっそくダウンロード。

ワクワクしながら見たのですが、期待が大きかっただけにちょっと残念ですね。

マズルカも、もうすこし活躍すると思っていたのですが弱すぎです。
by 織野 (2009-03-14 23:10) 

tomoart

>織野さん
初めまして。コメントありがとうございます。
期待が裏切られて残念でしたねぇ・・・今、初見では、この作品にはちょっと可哀想でした。当時でも作画に関しては、テレビアニメとしても中の下程度でしたからね(涙)。
当然、制作プロダクションの作画能力が低ければ、演出的にも難しい画は避けざるをえませんから、戦車系の活躍は難しかったんでしょう。テムジンやテクノポリス側のメカたちは削れませんが、マズルカはねぇ・・・・。CG全盛の今では考えられない話ですけど。
作画の腕が良ければ、出来上がりのように京介とエレナのベッタベタな話ではなく、もっと渇いたハードな展開になったんじゃないかとも思ってしまいます。

だからこそ今の技術でリメイクして欲しいなぁと思ってしまうんですが。当然当時の設定画を使ってね(木亥火暴)。
by tomoart (2009-03-15 01:40) 

秋水

テクノポリス21Cのプラモデルが再販されますね。
全部所有していますが、特に1/48テムジンって素晴らしい出来ですよ。
(マズルカとスキャニーは手を入れる余地が大)
残念なのは価格が3倍以上になっていること。ホビワだと2割引。
http://hobbyworld.aoshima-bk.co.jp/

LDで持ってますが、DVDはまだ出てないのでは?
出たら絶対に購入します。
by 秋水 (2009-04-21 21:48) 

tomoart

>秋水さん
初めまして。コメントありがとうございます。
はい。ワタシも昔のプラモを所有してますw ただブレーダーに手を入れ始めたら終わらなくなっちゃって出来上がりませんでしたが(爆)。今回の再販版もアマゾンで予約しちまいましたw まぁ、当時と比べても、プラモデルの販売量はかなり減ってるんじゃないですか?高くなっても仕方ないかと思ってしまいます。あのプラモ、今の子供にはちょっと厳しそうだし(汗)。
LD持ってるんですか。いいですねぇ。ワタシのはVHSなんで、かなり色のにじみが酷くて。ただそれをDVDにダビングしたんで、一応ちょっと安心してます(笑)。ホント、DVD(もしくはBlu-ray)発売して欲しいですねぇ・・・・。
by tomoart (2009-04-22 03:11) 

多田

初めまして
いきなりの書き込みお許しください
当時、映画館で見たおっさんです(笑)
最近見た方達からはかなりの酷評ですが(当時も評価は二分でしたが)、
かなりの作品と思っています。
だって今から25年前に、AIシステムの戦車でカーナビ搭載、それに対抗する
3分野に分かれたテクロイド機種の活躍は、ワンパターンの当時のアニメ
(1話完結式)のアニメしか見ていなかった世代にはあまりにも斬新でした。
又、映画は必ず2時間物が必須だった時代に、1時間10分(記憶違いなら
すいません)と凝縮された展開は、だらだら長いだけの映画にも一石を
投じたと思っています。(予算の関係との指摘もありますが、あれは正解です)

確かに作画は指摘されるレベルですが、画が綺麗なら良い映画か?との
議論もそれからしばらく続いたものです。
(マクロスなんか画が綺麗だけじゃないかと憤慨して嫌う方もいます)

愚痴ばかり書いてすいません。
最近こうした意欲作品があまりに少なく、また評価される機会も無い
風潮に憤りを感じ、このような書き込みをついついしてしまいました。
どうぞ、昔の作品でDVDどころかビデオにすらなっていない優秀作品が
多々ありますので、是非お探し頂ければ幸いです。

長文失礼しました。
by 多田 (2009-07-04 20:36) 

tomoart

>多田さん
初めまして。コメントありがとうございます。
いきなりの書き込みをどんどん待ってますんで、今後も是非w
劇場で観た方とは、ワタシと同様ですねw ワタシは2回行ってしまいました(爆)。
「テクノポリス21C」は、確かに素性はいいものを持っていましたね。ただ、残念なのは画にして行くところで良いチームと組めなかった事だと思います。最近また見直しましたが、単純な作画と共に、やっぱり演出などにかなりの問題もありましたね。まぁ、当時のアニメ界に、マトモな演出が出来る人材が少なかったと言うのもあると思いますけど。
時間が短いのは、多分単純にテレビスペシャルとして90分枠に収まる時間で製作したからだと思います。CM抜いたらだいたい70分が正味ですからね。実際の映画は78分程度のようですが。

ホント、DVDで発売して欲しいと思うんですが、この手の作品はフィルムとか消失しちゃってたりしそうなのがコワいですね・・・・。
by tomoart (2009-07-05 05:37) 

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