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髑髏検校 [小説レビュー]

髑髏検校「髑髏検校」(横溝正史) ※角川文庫

文化8年、蘭学生・鬼頭朱之助は南海の孤島で不知火検校と出会う。彼は生き血を吸っては若返る魔物であった。やがて江戸にやって来た検校は、市中を恐怖に陥れる。(「髑髏検校」)
天明3年、信州の大名新宮伊勢守景元は、若年寄の田沼山城守意知の謀略によって窮地に立たされていた。頼みは伊勢守家が秘蔵していたものの、今や散逸している三幅対を成す名笛。うち二つを同時に吹けば、最後の一つが共鳴して鳴り出し、埋蔵金百万両を指し示すと言う。名笛を巡って様々な人間模様が展開される。(「神変稲妻車」)

中編二本を収録。タイトルの「髑髏検校」のほうが1/3程度の長さで、残りの2/3が「神変稲妻車」である。ちなみに全く推理モノではないのでご注意を。
余り時代物は読まないワタシだが、これは意外と面白く読めた。横溝正史のストーリーテラーとしての才能を感じさせてくれる二本。ただ話がポンポン進んで飽きさせない代わりに、何となくダイジェストを読んでいるような、食い足りなさはあるが。
「髑髏検校」は、いわゆる吸血鬼の話を日本で展開してみた、といったもの。ただ吸血鬼ならではといった描写はディテールに留まっている。妖怪討伐の冒険譚としては普通に面白い。
「神変稲妻車」は、講談調の語り口で、『ペペンペンペン』とまでは入っていないのが不思議なくらいだw とにかく登場人物が多くて、敵だと思ったら味方だった等、目まぐるしく話が展開する。章立てが細かく割られていて、まるで新聞連載小説かという趣きだが、解説によると雑誌に連載されたらしい。それにしてもずいぶんと高いテンションの語り口で、次から次へと場面転換し、人物が交錯し、しかし最後にはちゃんと全員が物語の中心に向かって結集して来るのがスゴい。

単独でこの作品を読む人も余りいないと思うが、横溝の作品はかなり多岐にわたるようで、それなりに横溝作品を読んで来てこれを読むとなかなかに興味深いですよ。


髑髏検校 (角川文庫)

髑髏検校 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/06/25
  • メディア: 文庫

タグ:横溝正史
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