黎明の星(上・下) [小説レビュー]
「黎明の星 上・下」(ジェイムズ・P・ホーガン)創元SF文庫
木星から生まれた遊星アテナの接近によって全面がズタズタになってしまった地球から何とか脱出したランデン・キーンとその一行(「揺籃の星」)。それから数年、彼らは土星の衛星エリアに拠点を持つクロニア人たちの独特な習慣にも何とか慣れ、以前から聞き知っていたその価値観に魅了されていた。しかし、地球から脱出してきた大勢の者たちの中には、政治家や軍人など、クロニアの新たな価値観になじめず、地球のやり方をクロニアでも再現すべし、という一団がいた。彼らはクロニア政治に進出したが、大勢を変えるには至らず、フラストレーションを溜めていたのだ・・・・。
「揺籃の星」の続編。前作のレビューに書いた、サイエンス系かポリティカルアクションか、という事で言えば、やはりポリティカルアクションになりました(やっぱり)。彼の作品で言うと、代表作「ジャイアンツ・スター」シリーズの三作目「巨人たちの星」のようなイメージですね。主人公たちが新しい世界に飛び込み、反対勢力に乗っ取られそうになるところを主人公の機転で乗り切って逆襲する、という筋書きはほぼ変わりません。ホーガンだし、ハッピーエンドは約束されているようなもんなので(笑)、安心して読めます。
「巨人たちの星」ではガニメアンたちの超文明の描写、特にバーチャルリアリティをうまく使ったトリックなどが楽しい訳ですが、今作ではそこまでの描写は設定もあって不可能。でもその中でも重力発生装置など目新しいものが出て来てガジェッターも少し楽しめますw エアモビルや探査機の遠隔操作なんかは「ミクロ・パーク」も連想させますね。
ホーガンは人間の理性が社会を支配するユートピア思想の持ち主で、今までも事ある毎に描写している。前出の「ジャイアンツ・スター」シリーズのガニメアンたちの世界もそうだが、あからさまに出したのは「断絶の航海」だろう。地球からの特殊な移民によって組み立てられたケイロン人社会は、同じホモ・サピエンスの作った社会とは思えない程に先鋭化された社会だった。今作のクロニア人社会もほぼ同様の主旨を持った社会・価値観を有している。つまり『自分が働いた分だけ人からもらう。働かずに与えてもらうのは恥ずかしい事だ。だから人は働かずにはいられないし、働いて社会に貢献する事が人間にとって一番の喜びである。だから貨幣も要らない。余分な物を持ちたいと思う感覚が分からない』という社会だ。
みんなが率先して働き、それを一番の喜びとする、という性善説丸出しのユートピア思想に共感出来るかどうかも、この作品に乗れるかどうかの分かれ目かなぁ。ワタシは共感出来る程他人を信用していないので(汗)、ちょっと反乱側の肩を持ちたくなっちゃった(爆)。まぁ、ちゃんと悪役的描写がありますから、物語としては主人公側に感情移入出来るようになってますけどねw
まぁ、ホーガンファンが楽しめる作品となっており、これをいの一番に読み始める作品ではないかもしれないですねぇ・・・・。
前作。
ジャイアンツ・スターシリーズ。「巨人たちの星」は三作目。読むなら是非「星を継ぐもの」からどうぞ。
こちらは単独作品です。
木星から生まれた遊星アテナの接近によって全面がズタズタになってしまった地球から何とか脱出したランデン・キーンとその一行(「揺籃の星」)。それから数年、彼らは土星の衛星エリアに拠点を持つクロニア人たちの独特な習慣にも何とか慣れ、以前から聞き知っていたその価値観に魅了されていた。しかし、地球から脱出してきた大勢の者たちの中には、政治家や軍人など、クロニアの新たな価値観になじめず、地球のやり方をクロニアでも再現すべし、という一団がいた。彼らはクロニア政治に進出したが、大勢を変えるには至らず、フラストレーションを溜めていたのだ・・・・。
「揺籃の星」の続編。前作のレビューに書いた、サイエンス系かポリティカルアクションか、という事で言えば、やはりポリティカルアクションになりました(やっぱり)。彼の作品で言うと、代表作「ジャイアンツ・スター」シリーズの三作目「巨人たちの星」のようなイメージですね。主人公たちが新しい世界に飛び込み、反対勢力に乗っ取られそうになるところを主人公の機転で乗り切って逆襲する、という筋書きはほぼ変わりません。ホーガンだし、ハッピーエンドは約束されているようなもんなので(笑)、安心して読めます。
「巨人たちの星」ではガニメアンたちの超文明の描写、特にバーチャルリアリティをうまく使ったトリックなどが楽しい訳ですが、今作ではそこまでの描写は設定もあって不可能。でもその中でも重力発生装置など目新しいものが出て来てガジェッターも少し楽しめますw エアモビルや探査機の遠隔操作なんかは「ミクロ・パーク」も連想させますね。
ホーガンは人間の理性が社会を支配するユートピア思想の持ち主で、今までも事ある毎に描写している。前出の「ジャイアンツ・スター」シリーズのガニメアンたちの世界もそうだが、あからさまに出したのは「断絶の航海」だろう。地球からの特殊な移民によって組み立てられたケイロン人社会は、同じホモ・サピエンスの作った社会とは思えない程に先鋭化された社会だった。今作のクロニア人社会もほぼ同様の主旨を持った社会・価値観を有している。つまり『自分が働いた分だけ人からもらう。働かずに与えてもらうのは恥ずかしい事だ。だから人は働かずにはいられないし、働いて社会に貢献する事が人間にとって一番の喜びである。だから貨幣も要らない。余分な物を持ちたいと思う感覚が分からない』という社会だ。
みんなが率先して働き、それを一番の喜びとする、という性善説丸出しのユートピア思想に共感出来るかどうかも、この作品に乗れるかどうかの分かれ目かなぁ。ワタシは共感出来る程他人を信用していないので(汗)、ちょっと反乱側の肩を持ちたくなっちゃった(爆)。まぁ、ちゃんと悪役的描写がありますから、物語としては主人公側に感情移入出来るようになってますけどねw
まぁ、ホーガンファンが楽しめる作品となっており、これをいの一番に読み始める作品ではないかもしれないですねぇ・・・・。
前作。
ジャイアンツ・スターシリーズ。「巨人たちの星」は三作目。読むなら是非「星を継ぐもの」からどうぞ。
こちらは単独作品です。
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