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ハプニング [洋画レビュー]

Thehappening1_large.jpg「ハプニング」(監督:M・ナイト・シャマラン)

それはニューヨーク・セントラルパークから始まった。言語機能がおかしくなり、立ちすくむなり、次々と自殺していく人々。
バイオ・テロを疑われる状態に、フィラデルフィア在住の高校教師のエリオットは、妻のアルマと共に同僚のジュリアンの勧めで一緒に実家のある地方へ避難することに。エリオット、アルマ、ジュリアンとその娘のジェスが乗り込んだ列車は、同様に田舎に避難する人々でごった返していた。そして、全員が携帯電話で情報を集め、その集積から悲惨な状況がアメリカ東部一帯に広がっている事に気付いていく。一方列車は、目的地までの道半ばで鉄道関係施設との連絡が取れなくなって小さな駅で停車してしまう。どこへ逃げれば安全なのか、そもそも何から逃げているのか分からないまま、人々はパニックに陥っていく・・・・。

以前製作難航を伝えた事のある今作。M・ナイト・シャマランの映画は、「サイン」でちょっとガックリ来て、「ヴィレッジ」「レディ・イン・ザ・ウォーター」は見ていないのだが、この「ハプニング」は予告編で気分が持ってかれたのでw観たのだった。

そんな感じだったので、過度の期待は抱いていなかったのだが、それが良かったのか思ったよりも楽しめた。彼の映画は、荒っぽく言ってしまうと、『チープな程のB級映画風の物語をA級映画的語り口でみせる』式だと思う。幽霊映画の「シックス・センス」、アメコミヒーローの「アンブレイカブル」、異星人襲来「サイン」と言った風だ。そう言った観点から考えると、今作は世紀末パニック映画か。しかし、従来の映画と一線を画すのは、恐怖の正体が不明なままストーリーが進んでいく事。見えない敵からの逃亡、しかも天変地異などの見どころがない今回のようなものだと観客の興味を惹きにくいのだが、シャマランお得意の丁寧な語り口で、何となく観れてしまう。
その際に見どころと言うか、飽きさせない手口の一環として使われているのが、ショッキングな数々の自殺シーンだ。冒頭こそフレーム外で起こるが、その後の自殺シーンはだいぶ生々しい。客観的な距離を保って描いているので、ホラー映画のような心臓に悪い映像ではないのでいいけど。

内容的には家族の絆の物語と言った側面もあるけど、どちらかと言うとその辺りはライトな描写に終始したように思う。それは実際のところ悪くはない。こういった作品であんまりそこに傾倒すると娯楽作として中途半端になっちゃうから。ジェスの親離れが全く描かれないところとかも不自然さは否めないが仕方ないところだろう。死にものぐるい(言葉通り)で一緒に逃げている間に他人との結束が強くなっていくところや、その他人に起こる悲劇の悲惨さ(人の愚かさ)などが定番描写ではあるが心に残った。

俳優達はなかなかに適役だったかな。マーク・ウォルバーグは高校の数学教師という役にぴったりな雰囲気w 鼻の穴がデカイのが気になったが(爆)、人間臭くて全体的に良かったと思う。アルマ役のズーイー・デシャネルは冒頭のセンシティヴでエキセントリックな雰囲気から、ラストのチャーミングな笑顔までなかなかの熱演。この人、「銀河ヒッチハイクガイド」の時もそうだけど、独特の目つきをしていてちょっと人間離れした雰囲気を持ってる(瞬きが少ないのか?)。人間臭いマーク・ウォルバーグと対象的な雰囲気は冒頭の夫婦としての危機をうまく表していたと思う。今作の悲劇の一翼を担っているエリオットの同僚ジュリアン役のジョン・レグイザモも良かった。妻と連絡が取れない焦燥感、そして恐怖が表情に実によく表れていた。彼の存在が前半のドラマを引き締めていたように思う。

「シックス・センス」以来、シャマラン映画につきまとっていた終盤のどんでん返しという呪縛から解放され、今作は普通に観たいと思って観て、素直に楽しむ事が出来た。そういう意味ではこれからがシャマランの監督としての正念場なのかも。


シャマラン映画は音楽の使い方もうまいですよね。抑えた使い方なので印象に残るフレーズが少ないのが難点ですがw
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「シックス・センス」はまだBlu-ray化されていないんでしょうか?見あたりませんでした。
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coco030705

私は、自分のブログにも書いたんですが、ホラーは本当に苦手です。
でも、この人の作品だけは、見ることができます。怖がらせ方がうまいからです。これ以上はやりすぎ、という私の中でのホラーの一線を越えることなく、恐怖感を表現しています。だから、次回作(何かはわかりませんが)も、
見に行こうと思っています。
by coco030705 (2008-08-18 21:52) 

tomoart

>coco030705さん
こんばんは。nice!&コメントありがとうございます。
ワタシも何回か書いてますが、ホラーはダメなんですよ。「ハプニング」はショッキングなシーンは出て来るけど、その距離感が絶妙で、眼を背けたくなるギリギリで抑えているのがうまかったですね。cocoさんの怖かったトラだかライオンだかのシーンでは携帯の画面越しに見せたりとか。死体もほとんどがシルエットや遠景でした。これだけ死体や殺人シーンが出て来る映画を落ち着いて見せると言うのも、かなりのテクニックですねぇ。
by tomoart (2008-08-19 01:31) 

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