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スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 [洋画レビュー]

Sweeneylarge.jpg「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(監督:ティム・バートン)

19世紀のロンドン。理髪師ベンジャミン・パーカーは、妻に横恋慕する悪徳判事に陥れられ、無実の罪で投獄されてしまう。そして15年。名をスウィーニー・トッドと変えロンドンに戻って来た彼は、妻が判事に陵辱されて服毒自殺し、投獄前赤子だった一人娘は判事に幽閉同然の仕打ちを受けている事を知る。怒りに燃える彼は、彼に想いを寄せるラベット夫人と共に、判事への復讐を誓うのだった。

これは、明らかにバートンのプライベート・フィルムだろう。商業映画として力を入れてつくった、という感じではないと思う。

予算もかなりの低予算と見た。バートンもコダワリが薄れているのか力が抜けているのか、それともその両方なのか、いつも見せつけてくれるオープニング映像も、合成などが結構チープだったりする。そして本編はほとんど箱庭状態で、お馴染みのセット内での話が多い。パートカラー的な撮影や美術は確かに素晴らしいが、基本的に出て来るシチュエーションはトッド&ラベット夫人の家とターピン判事の家の周りに限られているのだ。

スポットライトを浴びる登場人物も少ない。主にはトッド、ラベット、タービンの3人の話だ。

この辺りは、もちろん舞台劇を翻訳した作品だからに他ならない。ストーリーが展開するのがその間でだけなのだから、シチュエーションや登場人物を広げようがないのも当然と言えば当然。

ただ、この発想って舞台の映画化作品としてはフツー過ぎる。こういう場合、『原作の舞台の方が面白いんじゃないか』と思わせてしまう事態になっちゃうんだよね。三谷幸喜の「笑の大学」観た時に強烈に感じたけど、この作品もそういう気がしてしまった。つまり、せっかくの映画化なのに、映画ならではの魅力を付加し切れていないのだ。

ワタシの超貧弱な舞台鑑賞での感想から察するに、舞台、特にミュージカルなんてモノは、つまらない訳がない(笑)。生身の人間が、見に来たヒトたちの為だけに全身全霊でストーリーを表現するのである。そこには(言わずもがなではあるが)俳優たちと観客が一体となったグルーヴ感(赤面)があり、そういった熱量を映画作品で醸成するのはほぼ不可能に近い・・・・特にブロードウェイ作品だぜ!?
それをわざわざ映画にして観せようと言うのだから、映画でなければ出来ない事を付加して行かないと原作に負けるのは目に見えているのだ。例えばリズムを取ったカットバックで見せて行くとか、シネスコサイズの画面を目一杯有効活用するとか、天候の変化でもっと劇的な効果を出すとか、登場人物たちを色々なところに移動させて広がり感を出すなどの試みだ。
しかし、この作品はどうやらミュージカル版を再現しようとしているだけのように見える。その一端は、スティーブン・ソンドハイムのスコアで映画を埋め尽くした事。これだけいっぱいに歌を詰め込めば、時間的リズム的に特殊な事をする余地はほとんどない。確かにその音楽は魅力的だったが、ここまで詰め込む必要が有ったのか?
これがバートンにとって初ミュージカルだから、というのはあったかもしれない。でも、「ナイトメア〜」(監督は違うけど)や「コープス・ブライド」など、人形アニメでは似た事は既にやって来ているだけに、もっとやりようがあったのではないかと思ってしまう。

そこで冒頭に書いたように『プライベート・フィルム』という印象を感じてしまったのだ。言ってみれば実験作品である。肩の力を抜いて、楽しい仲間たちと共に、趣味のように映画を撮る。そんな形で出来上がってしまった小品、という印象なのだ。

とはいえ、どんな時でもほとばしる情念を感じるのが往年のバートン作品であった訳なんだが・・・・。

ちなみに改めてミュージカル映画鑑賞の難しさを感じましたよ。魅力的な歌に身を任せたいのに、字幕読まないと作品について行けないんだから。これだから日本人にミュージカル映画は難しいんだよなぁ。とは言え吹替えじゃ魅力半減だし(汗)。


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この作品を観て、こういう佳作が撮れるようになったんだなぁ、と思ったんだけど、この系統の作品は続かないですねぇ。
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これもミュージカル風でしたよね。デップは歌ってなかったっけ?見直さなきゃダメだな(汗)。
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判事はどこで見たんだっけと思ったら、スネイプ先生でしたねw 白髪にしてるから、最初分かりませんでした。
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コメント 4

kovac

ありゃ、いまいちでしたか。。。
それは残念。
期待せずに見なきゃ

デイ・ウォッチのCM見ましたよ~
迫力ありますね
by kovac (2008-02-12 23:10) 

tomoart

>bono3さん
こんばんは。nice!&コメントありがとうございます。
ワタシ的には今イチでしたね。ミュージカル映画も大好きな米国人にはどうか分かりませんけど。とにかく一番の問題点は歌聞きながら画面を堪能しながら字幕も読まなきゃいけない事。せめてEnglish Listeningが出来れば、もう少し好意的に観れたかもしれません(爆)。

「デイ・ウォッチ」のCMですか?いつやってるんですかね・・・。ワタシはまだ出会った事ないです。公式サイトに予告編出てますけど、うちのMacじゃ非力でパラパラ漫画みたいで(爆)。いいなぁ。
by tomoart (2008-02-13 03:14) 

coco030705

こんにちは。
さすがイラストレーターさんですね。細かく見ていらっしゃる。
私も見終わって1日経ってみると、あの残酷さがそんなに
気にならなくて、かえってジョニデとヘレナの歌が印象に
残っています。
それからやっぱりジョニデの存在感です。やはりアカデミー賞の
審査員たちはよく見ていると思いました。
by coco030705 (2008-03-06 09:47) 

tomoart

>coco030705さん
こんばんは。nice!&コメント&トラバありがとうございます。
血が飛び散るのは、ワタシはあんまり怖さは感じませんでした。ワタシが怖いと感じるのは、今作のような直接的な描写より、じわじわ恐怖を煽られたり、拷問みたいな長時間イタさを感じそうな場面とかなんで。
もしかしたら、もっと怖がった方がこの作品の良さを堪能出来たのかなぁ・・・・。血がドバドバ出るってのは、確かに映画独特の表現ですもんね。
by tomoart (2008-03-07 03:57) 

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