赤い館の秘密 [小説レビュー]
「赤い館の秘密」(アラン・アレキサンダー・ミルン) 創元推理文庫
1920年代の英国・ウッダム村。赤い館と呼ばれる資産家マーク・アプレットの家で殺人事件が起きる。殺されたのはマークの兄で、その日にオーストラリアから帰って来たヤクザもののロバート。同時にマークの姿が消えた事やみんなの証言から、どうやら金銭トラブルでもめた末のマークの犯行らしかった。
しかし、たまたまその時に当家に投宿していた数人の客の中の一人ビル・ベブリーの友人であるアントニー・ギリンガムが、たまたまその現場に居合わせ、不審な点の多いのに気付く。ベブリーをワトソン役にしてのギリンガムの素人探偵業が、密かに始まるのだった・・・・。
作品の発表は1921年。現代の推理小説作品と比べるべくもないが、それより何より年代的・舞台的に好みであるので、ちょっと期待し過ぎてしまったようだ。説明文や巻末の解説でさんざん称賛されているが、これは発表時の事と考えた方がいいだろう。ワタシ的には、中の下くらいの内容だった。
登場人物たちはなかなか魅力的に描けているし、英国の田舎の風景も悪くないが、推理小説が文学性まで求められる以前の作品だけに、そういった推理部分以外の描写だけで評価できる作品ではない。
勢いパズル小説としての資質が問題になる訳だが、残念ながらワタシは事件部分を読んだ途端に一番キモのトリックに気付いてしまい、違っている事を願ったが、結局当たり。とは言え現代の推理小説の読者には2-1=1くらい簡単なトリックになってるので、多分多くの読者が気付いて呻いた事だろうw この段階で評価は大きく下げざるを得ない(あくまで現代上で、ということだが・・・)。
まぁ、トリックは時代によって使い古されて来るので、この作品自体が悪い訳ではないのだが、作品としての致命的欠陥は登場人物の少なさ。実のところ怪しいヤツは一人しかいない。つまり、この小説はどちらかと言うと倒叙もの(いわゆる「刑事コロンボ」)に近い作りになっている為、先に上げた古びたトリックのバレ易さにあわせて魅力も半減してしまった部分があると思う。また、一瞬だけ出て来る登場人物も多く、使い切れていない印象だし、主役のギリンガムの特殊能力(見たモノの記憶力)も前半で忘れ去られてしまう。
まぁ、全てはトリックの問題に集約されますね。トリックさえ気付かなければ、結構面白いと思いますよ(木亥火暴)。
倒叙ものミステリーの代名詞。面白いよね。
ミルンと言えばこれですかね。推理小説は「赤い館の秘密」一作だけだったらしい。
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