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古時計の秘密 [小説レビュー]

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「古時計の秘密」(キャロリン・キーン) ※創元推理文庫

1930年代のアメリカ。18歳のナンシー・ドルーは弁護士の父を陰ながら手伝っていた。

ある日ナンシーは老姉妹と孫の3人住まいの家庭と出会った。収入が少なく苦労している様子と、遺産を残すと約束していた資産家の親族がいたが、何故か遺産はナンシーも嫌っているトプハム一家が独占してしまった事を聞く。遺産を待っていた親類縁者は他にも何人かおり、皆お金に困っている事を知ったナンシーは、皆の為に遺言状探しを始めるが・・・。

少女探偵ナンシー・ドルーシリーズの一作目。原本の発行は1930年とある。戦前のおおらかな雰囲気を感じさせるジュブナイルと言える。
しかし少女探偵と聞いて、アナタは何歳を想像しますか?ワタシの想像では14〜16くらいの感覚だったのですが、今作の主人公は18歳。今では結構大人な年齢に感じます。18歳のお陰でナンシーは実はコンバーティブルを乗り回していますw アメリカが舞台なので(特に30年代と言う事もあるかも)、車くらい運転しないとどこへも行けません。ナンシーは捜査の過程でとにかく車でどこへでも出掛けます。花形満や金田正太郎じゃないのでwナンシーの設定は18歳以下には出来なかったのかもしれないですね。
ただ、今の時代の18歳よりはちょっと子供っぽかったりします。お父さんにおんぶにだっこなところもあるし、このお父さんと住込の家政婦さんには隠し事無し。また二人の対応も、昔懐かしいアメリカTVドラマの世界そのままで、ニコニコ笑って『気をつけなさい』とか注意したりしています。
逆に今の18歳より大人な部分もあります。年上の他人や初体面の人に対する態度などはしっかりしていて常識をわきまえています。
全体的にナンシーというキャラクターを読んでいくと何とも微笑ましく、荒んだ現代の我々にしてみればとてもホンワカして来ます。対象としては40〜50代の親や10歳前後の子供が読むのに適している感じ。ナンシーの同年代が読んだら逆に、相当違和感を感じるんじゃないかな。

あと、完全にジュブナイルとして書かれているようで、ストーリーはだいぶ一本調子。ほとんど挫折はありません。訳者あとがきでも“勧善懲悪”と書かれている通り、良い者と悪い者もハッキリと書き分けられており、ハッピーエンドでは良い者が得して悪い者が損するように出来ています。ですから大人の方が読むなら、ライトノベルとしてしっかり認識して読み始めないと、ちょっとバカにされたような気分になるかもw

しかし、あとがきを読んで驚いたのは、ナンシー・ドルーのシリーズって、なんと数百冊出ていて、いまだに新作が発表されていると言う事実。作者のキャロリン・キーンと言うのは、ナンシーのシリーズを書く為に出来た工房のペンネームだそうです。お陰でナンシーは今でも18歳で今彼の地で発刊されている新作は、今の時代に生きる18歳のナンシーになっているんだそう。何とも壮大なお話ですねぇ。


今作。これからしばらく、創元で初期シリーズの刊行を続けて行くつもりらしいです。続くと良いなぁ。
古時計の秘密 (創元推理文庫)

古時計の秘密 (創元推理文庫)

  • 作者: キャロリン キーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 文庫

こちらの金の星社のシリーズは表紙の通り、現代版のナンシーのシリーズ。粗筋を読むと、確かに「古時計の秘密」とは一線を画す雰囲気のようです。
少女探偵ナンシー・ドルー 戦線離脱

少女探偵ナンシー・ドルー 戦線離脱

  • 作者: キャロリン キーン
  • 出版社/メーカー: 金の星社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本

ところで既報の通り、米国では先日映画が公開された「ナンシー・ドルー」ですが、さて、日本では公開されるんでしょうかね。ヒットとは行かなかったようだったのが気がかりです。ジュリア・ロバーツの姪、エマ・ロバーツ主演と言う事で期待されたんですがね。当初は夏公開と言う情報が流れていましたが・・・。
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