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模倣犯(四)(五)〈完〉 [小説レビュー]

「模倣犯(四)」「模倣犯(五)」(宮部みゆき新潮文庫

引き続き『第三部』である。『第一部』『第二部』は、大雑把に言えばほぼ同じ期間の話を警察側と犯人側から描いた物語だったが、『第三部』はいよいよその続きである。

ハー、結局ゴールはなく、PKで何となく決着(意味分からない人は『第二部』の感想を参照して)って感じである。想像はしてたけど。都合五冊読んで、何ともスッキリしない終わり方だ。疲れました・・・。つまらない訳じゃないんだけどね、全然。面白く読むんだけど、ホントに疲れるのよ、これが。

相変わらず伏線の回収はいい感じ。『第一部』『第二部』でちょこっと顔出ししてふっと消えていたモブのような人々が次々と出て来て事件に重層的に絡んで来る。一つ一つはたいした話ではないが、いくつもいくつも出て来る事で、物語に流れが作られて行くのだ。この辺りの構成の妙味は素晴らしいの一言だ。

この話、基本的な主要人物は、犯人を除くと5人。巡査部長で捜査本部デスクの武上悦郎、一家惨殺事件の生き残りの塚田真一、犠牲者の祖父の有馬義男、ルポライターの前畑滋子、蕎麦屋の娘の高井由美子。その他の人物はみんな彼らの関係者という位置付けでいいと思う。警察官であり、事件の外の人間である武上悦郎を別とすれば4人中3人までが「イヤなヤツ」と劇中何度も思わされる。ワタシのように主役に感情移入して読んでしまうようなタイプには、こういう描写が一番キツい。「イヤなヤツ」には感情移入出来ないからだ。良さそうな描写が続くなぁと思い、感情移入しそうになると「イヤなヤツ」描写が入ったりするので、何とも心持ちが悪くなる。

ワタシは基本的にハッピーエンドの人なのである。その段階で、結構宮部みゆきのターゲットではないかもしれんwでも彼女の文庫本は他のも結構読んだ。「我らが隣人の犯罪」「堪忍箱」「地下街の雨」「本所深川ふしぎ草紙」「淋しい狩人」「魔術はささやく」「レベル7」そして前の項でも紹介した「スナーク狩り」等々・・・・。どれもハッピーエンドどころか物悲しく終わって行くものがほとんどだ。それでも嬉々として買い漁ったのは、ひとえに面白いから。そういう意味ではこの「模倣犯」もその範疇では確かに面白い。前の章でも書いたが、宮部みゆきの面白さの半分かそこらはその文体にあるのだから。頭の中にスッスッと染み入って来るように内容が頭に入って行くので止まらなくなってしまう。無駄に修飾されず、逆にぶっきらぼうとも言える程に事実だけを述べているのに(ゆえに?)、ホントに読みやすいのが宮部みゆきのスゴさだ。

それでもこの「模倣犯」に対して反発を感じてしまうのは、その長さが余りにも特殊だからだ。ワタシがだいぶ長いと感じた「蒲生邸事件」「理由」だって一冊だったのに、いきなり5冊とは!その5冊を読む間、ワクワクならば誰も文句は言わないが、ずーっと辛い気分だったんだよ。こりゃ文句の一つも言いたくなるってもんだ。
 

模倣犯〈4〉

模倣犯〈4〉

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫


模倣犯〈5〉

模倣犯〈5〉

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫


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