迷路荘の惨劇 [小説レビュー]
迷路荘の惨劇(横溝正史) ※角川文庫版
金田一耕助シリーズ12冊目。
富士の麓に立つ旧伯爵邸である名琅荘は、当時の伯爵の意を反映して秘密の扉やどんでん返しなどが盛り込まれており、別名迷路荘と呼ばれていた。その迷路荘が実業家の手によってホテルに改築され、間もなくオープンしようとしていた。そこに、当の実業家からの紹介だと言って片腕の男が現れる。ところがその男を部屋に案内してしばらくすると、こつ然と姿を消してしまったのだ!実は彼の地は20年前に血なまぐさい事件が起きており、その犯人と目された人物が片手の男だったのだ。いったいそこに何らかのつながりがあるのか。謎を孕んだまま、いよいよ連続殺人の幕が切って落とされるのだった・・・・。
久々の横溝の長編だが、これはよかった。怪奇性も充分発揮されていたし、解決に関しても一気に謎を解明して行く過程が気持ち良く描かれ、推理物としてもいい感じだった。
怪奇性という点では、迷路荘の怪しい仕掛け建築と、狭い地下通路が良い感じで描けていた。死体発見の興味やその猟奇性も充分で、いい時の横溝節が炸裂してゾワゾワ来たw八つ墓村もそうだったが、やっぱり地下通路というのは存在自体が怪しー感じで、それだけでも雰囲気が出るなぁ。横溝正史も、詰まった時に安易に愛欲絡みに走るんだったら、地下通路に走った方が数段良かったのに(爆)。
解決編も、小出しにしないで最後にいっぺんに、しかも金田一耕助本人の口から謎解きさせているので、珍しくそれなりに解決編にカタルシスを感じられる構成になっている。途中、意味が分からなくなるところがあるのは、ワタシの頭が悪いせいなのか?多分そうなんだろう・・・・(汗)。
とにかく、ここまで読んだ横溝作品の中では一二を争うバランスの良さ。怪奇・猟奇性、ロジカルな解決、シリーズとしてのトータルな出来映えは、素晴らしい。ここまでだんだんと横溝作品も劣化傾向にあるように思ったが、ここで持ち直してくれたので、またこれからに期待が持てそうだ。
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