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犬神家の一族 [小説レビュー]

犬神家の一族(横溝正史) 角川文庫版

金田一耕助シリーズ5作目(?)。このシリーズ、巻数が追い辛いね・・・。

昭和2×年、那須の一大財閥である犬神家で頭領が亡くなり、その遺言が公開されたが、その内容は3人の実の娘とその家族にとっては寝耳に水であった。頭領の恩師の孫娘・珠世に非常な優位さをもたらす物であったからだ。そこから遺産を狙う3人の娘とその息子たちの、珠世を狙った争奪戦が始まる。その加熱が惨劇を呼ぶのだった・・・・。

映画を観て、約1年振りに再読してしまった。やはり映画と比較すると、物語としてはこちらの方が良く出来ている。尺の関係で映画ではストーリー的に縮めざるを得ないところをしっかりと描いているので、必然性や納得性が全然違う。だからといって映画を否定する物ではないが。メディアとしての特性の違いがあるという事。
また、意外と天候が荒れたり、冬だから雪山が出て来たりと、自然描写が多かったのにも改めて驚いた。映画では、これも尺やら予算の関係があってだろうが、一回雨が降っていた程度だったと思ったが。
そして一番の違いは、登場人物の整理のされ方だろうか。
映画では(映画版のレビューでも若干触れたが)オールスターキャスト的に劇中に出て来る人物は多いのだが、ただそれ以外の登場人物は限られている。お陰で登場するキャラクターは脇役までしっかりしている印象がある。それは役者が演じる事によって、キャラクターの印象が短時間の登場でも伝わりやすいからでもあるだろう。
翻って小説では、もっと人物配置が開かれている印象だ。脇役は基本的に印象に残るほど描かれてはいない代わりに次々と出ては消えて行く。一例を挙げれば深田恭子や尾藤イサオは小説版では印象がない。それによって逆説的だが主要登場人物に意識が集中するようになっているのが小説版だと言えるだろう。犬神家の面々、金田一、古舘弁護士、大山神官、署長辺りまでの非常に限られた世界の中で語る事で、物語に集中しやすくなっている。

何はともあれ、映画とはまた全然違った面白さがあるのは間違いない。映画を観たから、と思わずに、是非原作を読んでみてください。
 

犬神家の一族

犬神家の一族

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1972/06
  • メディア: 文庫


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