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太郎物語 大学編 [小説レビュー]

e09ed0920ea037429534d110.L.jpg「太郎物語 大学編」(曾野 綾子)新潮文庫

昔々(ググってみたら1980年と判明)、NHKの銀河テレビ小説(毎月〜金21:40〜22:00)という枠がありまして、その枠内で「太郎の青春」というドラマをやったんですね。広岡瞬が主役の山本太郎でした。それを見て、面白かったので原作に手が伸びて、それ以来、何度も読み返している。

受験生の山本太郎は、ランクの高い都内の大学に補欠で受かったにもかかわらず、納得出来なくて正当に受かった名古屋の大学に入学した。親元を離れて初めての一人暮らし、東京と違う名古屋の環境、文化の違う同級生達などとのバタバタした一年が過ぎて行く・・・・。

「太郎の青春」は、私にとって初めての『青春』ドラマだったといえるかもしれない。今まで感じた事のない甘酸っぱい気持ちを喚起した。特にドラマでは、一般受けを考えたのか、小説に比べて恋愛部分のウェイトが大きかったので、中学生だったワタシは一撃でやられてしまったのだった(爆)。

前述のように少し軽かったドラマより、ここで紹介する原作本はもっと硬派だ。原作の太郎は、フラフラしない。精神的にとても自立して、自分というモノをしっかりと持っている青年として描かれていた。恋愛要素もこの本の前巻にあたる「〜高校編」に比べても一歩後退しており、ときめくようなシーンはほとんどない。
しかし逆にその、骨太で生真面目なストーリーが当時の私には心地よかった。 彼はまず群れない。友達はいるがべったりせず、自分のスタンスを崩さない。高校時代の憧れの先輩の現状に触れても取り乱さず、両親に泣きつくでもなく、閉塞感を感じれば一人旅に出掛けて自分を見つめ直してみたりする。
とにかく『大人』といった対応が見事なのだが、そのブレない中での微妙な感情の揺らぎの描写がこの作品は素晴らしく、ヘタすると優等生過ぎて反感もたれそうな太郎をとても魅力的に描いてある。

一読以来、ワタシの目指す自画像は山本太郎になった。(ま、結局そんなにご立派な人間にはなれなかったが。)
時代が変わって社会的描写は古く見えるかもしれないが、根底に流れる人物描写は決して色あせる事はない。

特に思春期まっただ中の人や、思春期まっただ中の子供を持つ親御さんにお薦めしたいです。


高校編〜大学編と読み進むのが順番なんだが、太郎のキャラがこの2編の中でちょっとズレている気がして、大学編の方の太郎の方が好きなので、大学編として紹介しときます。
太郎物語 (高校編) (新潮文庫)

太郎物語 (高校編) (新潮文庫)

  • 作者: 曽野 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/01
  • メディア: 文庫
太郎物語 (大学編) (新潮文庫)

太郎物語 (大学編) (新潮文庫)

  • 作者: 曽野 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/05
  • メディア: 文庫

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コメント 7

shito

はじめまして。
私も太郎物語は何度も読み返していてカバーがボロボロになっていますが、今でも手元においてあります。
私も大学編の太郎の生き様に憧れたファンのひとりです。
この小説を読んだのがちょうど高校のときで、
大学の選択に大きな影響を与えてくれました。
(地方大学でひとり暮らしするところだけしか同じではありませんでしたが・・・)
ちょっと懐かしく、つい嬉しくなりコメントさせていただきました。
by shito (2009-02-21 16:49) 

tomoart

>shitoさん
初めまして!nice!&コメントありがとうございます。古い記事をお読みくださってウレシいですm(_ _)m。

ワタシは美大志望で、国公立の美大をどこにしようかと思っていた時に愛知県立芸術大学を見に行った事がありますw そこに入っていたら本当に太郎の後追いになったんですが、余りにも学校の周囲が田舎過ぎて挫折しました(爆)。結局多摩美に入って自宅通い。今となってはどちらが良かったか分かりませんが・・・・w
by tomoart (2009-02-23 00:05) 

chaser

太郎物語で検索していたらtomoartさんのここにきました。

銀河テレビ小説「太郎の青春」を高2のころだったか見てました。
偶然にもその数カ月前に初めて完読した本が太郎物語。

大学選択は九州にいるにもかかわらず迷わず名古屋へ
山本太郎みたいな大学生活を送りたいと。

残念ながら小説上での北川大学ではありませんが そこのとなりのとなり
あたりの大学に 太郎はマンション 私はバンカラな大学の寮

でも太郎物語のおかげで120%青春を謳歌 できました。
とても思い出深い作品です。

数年前の書き込みにコメントしてしまいました。失礼します。
by chaser (2011-09-08 22:24) 

tomoart

>chaserさん
コメントありがとうございます。こちらこそ古い書き込みにありがとうございますm(_ _)m
じゃあ、chaserさんの方がワタシより数年先輩ですねw この作品を原作→ドラマですか。ワタシにはもう想像つかない世界です(笑)。今作は今読むとやっぱり太郎は優等生過ぎると言われちゃうかもしれませんね。酒に溺れる事もないし、女の子といちゃつく事もないし。でも純な頃にはそれが心地よかったんですよねぇ。“しつけ”という言葉も今では使われなくなってしまったかもしれませんね・・・・。「時計をあの頃に巻き戻せたら」とつい思ってしまうのでした。

最近本のレビューは滞ってますけど(てか本を読めない精神状態が続いています・・・)、よろしければまたお立ち寄りくださいませ。
by tomoart (2011-09-09 03:17) 

ポコママ

太郎の青春でググッてこちらに辿り着いた者です。

原作のモデルになったらしい実在の太郎さんが大学生の時、私が住んでいた名古屋のマンションと一本道路を挟んだ向かいのマンションにお住まいと、ご近所では専らの噂でした。当時私は小学生でしたが、中学生の時に「太郎の青春」のドラマを見て、おお、これが噂のお兄さんのお話なのネ♪と思ったものです。

本当に爽やかなドラマでしたね~。太郎のお母様役の岸田今日子さんが特に素敵だなぁと思って見ていました。各NHKの公開ライブラリーで視聴できるみたいなので、機会があれば、観てみたいなぁと思います。
by ポコママ (2012-04-29 21:56) 

tomoart

>ポコママさん
コメントありがとうございます。印象的な思い出をお持ちですねw 羨ましいです〜。ドラマ版も視聴出来るとは知りませんでした。ワタシも気になります。

実は原作本は後に再度レビューしております。よろしければそちらもお読みください。
太郎物語 高校編
http://tomoart.blog.so-net.ne.jp/2011-01-10
太郎物語 大学編〈part2〉
http://tomoart.blog.so-net.ne.jp/2011-01-14
by tomoart (2012-05-01 01:18) 

Katy

はじめまして、「太郎物語」でたどり着きました。NHKの「太郎の青春」を中学の時に見たのが始まりです。広岡瞬さんの爽やかさにノックダウンされブロマイドまで買ったのを思い出します。原作を読んだのは、くよくよしてた浪人時代、しかも、大学編→高校編と時間を逆行して読んでしまったのは痛恨のミスだったかも。(大学進学へのモチベーションが下がったというか)結局、大学は気の進まない都下の三流大学で一人暮らし。太郎と自分の違いを思い知らされた感じです。でも、こうして振り返ってみて、太郎物語大学編だけ読んでたらまた違ったのかなと想像するのも面白いですね。もちろん、今の人生に何も後悔は無いんですが。80年代に青春を過ごせた私は幸せ者なのでしょうね。
by Katy (2013-01-29 16:57) 

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