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第9地区 [洋画レビュー]

District_nine_ver2.jpg「第9地区」(監督:ニール・ブロムカンプ)

突如として南アフリカのヨハネスブルグ上空に現れた巨大なUFO。だがその後の動きがなかったため、人類が内部へと侵入すると、内部にいた何万人ものエイリアン=“エビ”たち(エイリアンの蔑称)は栄養失調状態でまともに動けない状態であった。仕方なくエビたちを地上に降ろし、プレハブの家と食事、医療を提供。しかし住民たちとエビとの間に騒動が絶えなかったため、エビたちの住む場所は第9地区と呼ばれる隔離された難民キャンプとなった。
そして28年後、スラム化する一方の第9地区はますます手に負えなくなって来たため、エイリアン対策を行っている超国家組織NMUは、エビたちの住居を人類と更に隔離すべく、第10地区と名付けた遠隔地への移設を決定する。移設責任者に抜擢されたのはNMU職員であるヴィカス(シャールト・コプリー)。ヴィカスは傭兵部隊を連れて第9地区に乗り込むと、強硬手段も駆使して移設に必要な同意書をエビたち一人一人から取り付けて行く。しかしその中である事件が起こる。それがヴィカスを含めた大勢の運命を狂わせて行くのだった・・・・。

これはスゴい!何とも言えない恐ろしい作品の登場だ。いかにも不衛生な汚水や粘液にまみれた第9地区。胸くその悪くなるようなエイリアンたちのデザイン。そして血みどろの展開。ストーリーも美術も何ともハード。ピンと張った糸の様に、何かが起こるという期待と恐怖感が、映画の出だしから観客を捉えて話さない。そして中盤からはヴィカスとエイリアンたちの行く末が気になってグイグイと物語に引き込まれて行く。

当ブログでも何度か取り上げて来た今作だが、エイリアンの難民キャンプの話という事で、当初はこんなにサスペンスフルな作品だとは想像もしていなかった。もっと平板な、ちょっとコメディチックな話なのかと思っていたのだが、いい意味で裏切られた印象だ。
全体の構成も、この事件を振り返るドキュメンタリー作品、といった趣きの作りではあるのだが、それだけで作るのではなく、必要なところは映画的シーンも差し込みながら作っているのがよい。そういう場合に得てして散漫な印象になりがちだが、ちゃんとバランスが考えられた編集で違和感は全くない。

この作品の中心であるヴィカス役のシャルト・コプリーは、冒頭の小役人的なキャラから、徐々に変わっていく焦燥感に駆られた中盤、そして責任感に囚われた終盤と、様々な顔を見せる難しい役を見事に演じていて素晴らしい。基本的に彼一人の物語なので、ここがしっかりしていないと魅力が半減してしまうところだった。

またガジェッターとしてもw意外な程に魅力満載。「アバター」チックな搭乗型ロボットも出て来て、しかも「アバター」よりカッチョイイぜ(爆)。その他エイリアン用の様々な武器が登場する。

一部で言われている政治的側面だが、確かに冒頭のエイリアンの扱いなどを見れば、誰もがアパルトヘイトを思い出すように出来ている。しかし日本人的にはそこは味付け程度に意識していればいいんじゃないだろうか。差別問題を軽視せよ、という事ではなく、それ以上に魅力的な作品だから。

物悲しいながらも感動的な締めくくりを見せるラストシーン。余りにも悲劇的ながら救いを感じるのは、ヴィカスの妻・タニア(ヴァネッサ・ハイウッド)が最後までヴィカスを愛し続けている描写があるからだ。この辺りもかなり深いし、色々と残酷な想像をも喚起する。絶妙な締めくくりだった。
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tomoart

>モカさん
こちらにもnice!ありがとうございます。
「第9地区」、グロ系に弱くなければ、結構お薦めですw よろしければご覧ください。
by tomoart (2010-04-12 02:31) 

tomoart

>xyz-menさん
>cfpさん
nice!ありがとうございます。皆さん、「第9地区」はご覧になったでしょうか?ホント、売り言葉の薄い作品ですが(汗)、中身は濃いので、気になったら是非ご覧ください。
by tomoart (2010-04-13 03:10) 

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