ジャンパー：moromoro_tomoart：SSブログ

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ジャンパー　[洋画レビュー] [編集]

「ジャンパー」（監督：ダグ・リーマン）

デビットは25歳。ニューヨークでリッチな生活を送る彼は、ハイスクール時代に死にかけた事をきっかけに能力を覚醒させた“ジャンパー”＝テレポーテーション能力者だった。覚醒した時に銀行から“借りた”大量の札束によって、昨日はスフィンクスの上で日光浴、今日は雨のロンドンで女の子と夜を過ごす、といった享楽的な毎日を謳歌していた。
そんなある日、自宅にローランドと名乗る男が訪ねて来る。彼は“パラディン”＝ジャンパーを狩る組織の、優秀な活動員だった。その組織は、彼ら自身が開発した専用の武器を使ってデビッドのようなジャンパーを抹殺する事を使命として、何世代も前から脈々と活動して来たのだった。
デビッドは這々の体でローランドから逃げ出したが、パラディンはジャンパーに関わる家族や恋人の命を奪う事も厭わない組織である事までは知る由もなかった・・・・・。

映画「ジャンパー」は、クライム・ムービーである。デビッドはジャンプに覚醒するまでは内気で善良な少年だったが、最初の犯罪の金庫破りをしてからの8年間ですっかり自分勝手になってしまい、災害で危険に身をさらしている人たち（ジャンパーなら助けられる状況の）をニュースで見ても、ニヤリと笑って首を振るだけ。金庫破りをした時に「必ずお返しします」というメモを残した事も既に頭にはない。『今』を楽しく生きる事だけしか頭にないようなキャラクターである。もちろん肉親や彼女に対する思いなど人間らしい面は充分備えてはいるものの、基本的に享楽的志向は変わる事はない。
ただ、だから悪人である、という事ではない。多分我々一般大衆のほとんどは、テレポーテーション出来るとなったら同じような行動に走るのではないだろうか。人に危害を加える事もなく、ただただ自分の欲望に素直に特殊能力を使っているだけなのだから。だからこそ観ている我々は、犯罪者ながら彼という存在に感情移入出来るわけだ。物語的にも彼女との再会の時のはにかんだ姿や、アル中で毛嫌いしていた父親が襲われた時の取り乱した態度などにより、徐々にデビットに対して好感を抱くように仕掛けられている。

ただ「ジャンパー」の物足りないところは、そうやって観客が感情移入して応援している主役が、結局最後まで成長しないところ。ローランドとの決着の付け方もなんだか微妙だし・・・・。警察に出頭させて改心させるなんて話は誰も期待していないが、クライム・ムービーならそれらしく、盗みや殺しを乗り越えて、世の中の影の存在としてたくましく生きて行く、といったような決意を臭わすような終わり方だったら、もっと納得性があったと思うんだけど。例えば・・・8年たっちゃったっけど持ってるお金は全部銀行に返し、改めて一文無しに。でも彼女さえいればオレはやり直せる！とかだったら、多分やってしまった事は消せないけれど（ま、それ言ったらアクション映画なんて見れませんしw）、観客はその後の彼に対して明るい未来を想像する事が出来たと思う。今作は上映時間も今どき珍しく90分弱という短さなので、そういった後日談を差し込む余裕は充分にあったと思うんだけどね〜。

蛇足だが、別の面からつらつら思い返してみるに、この主役の設定はアニメ版「時をかける少女」の紺野真琴と似ている事に気付いた。「時かけ」でも真琴は自分の私利私欲（こっちの方がスケールが庶民的だが）の為に、能力を使いまくる・・・。ま、ワタシ的な評価としてはどっこいどっこいかな・・・・娯楽作としては、まぁよく出来てるけど、もう一息で本当に面白くなりそうなのに残念だなぁ、といったところ。

ヘイデン・クリステンセンの顔って、絶対悪人顔だよね（爆）。だからダース・ベーダーになっちゃうんだけどw