双生児は囁く [小説レビュー]
「双生児は囁く」(横溝正史) ※角川文庫版
金田一耕助モノでない、初期の作品を集めた短編集。汁粉屋の娘/三年の命/空家の怪死体/怪犯人/蟹/心/双生児は囁く・・・・の七作品を収録。
「汁粉屋の娘」は大正10年発表と言うのだから古い。まだ作品投稿時代のものらしい。その後の3作品が勤めながら書いたもの、最後の3作品が戦後の作品・・・と巻末の解説に書かれている。お陰で古いものに関しては旧仮名遣い的なものもあって、現代の一見さんには余りにも読み辛い作品集だ。その上アマ時代のものは出来からしても余り面白くもなく、まぁ読めるのはやはりプロになってからの作品と言えるだろう。
「蟹」の悲恋には物悲しさを感じるし、「心」もワンアイディアものとしてはまとまっている。そして表題作の「双生児は囁く」は、シリーズ化はほぼされなかったものの、夏彦と冬彦という双子探偵が出ている中編としてそれなりに探偵小説の体を成している。
とまぁ、この本の企画自体が多分に横溝正史小説の成長を時系列で並べ、展望する事で実感出来る事におかれているようなので、そういう意味では興味深い。ただし、横溝正史に興味がないとなんにも楽しくないだろう。特に金田一モノが入ってないしね。
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