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立喰師列伝 [邦画レビュー]

「立喰師列伝」(監督:押井守

『立喰師』と呼ばれる伝説の人物達を時系列を追って描く、架空の歴史ドキュメンタリー(?)。戦後の混乱の中で誕生した初代立喰師・月見の銀二を筆頭に、現代までの流れを合計8人の立喰師と、立喰師評論家その他を配して描く。
『立喰師』─それは説教・蘊蓄・奇行など、様々な手段で飲食店店主を圧倒し、それによって飲食代を払わずに去って行くという伝説の人物達。その手法はもはや芸の域に達するという。
月見そばに絶景を見た月見の銀二(吉祥寺怪人)、キツネそばに必ずコロッケを付ける美女ケツネコロッケのお銀(兵藤まこ)、必ず捕まって店主達から暴行を受ける哭きの犬丸(石川光久)、一杯のそばから口論となり殺されてしまう冷やしタヌキの政(鈴木敏夫)、敵対する牛丼店から派遣されたと噂される牛丼の牛五郎(樋口真嗣)、ハンバーガーを喰い尽くすハンバーガーの哲(川井憲次)、カレー屋で「中辛、中辛!」と叫ぶ見るからに怪しげなインド人の中辛のサブ(河森正治)○○○○ランドで懐からフランクフルトを取り出し食べた事で従業員に捕まってしまうフランクフルトの辰(寺田克也)、計8名の立喰師の『伝説』が明らかにされる。

スーパーライブメーションと名付けられた映像は竹版スターログでも取り上げられていたが、まぁ面白いといえば面白い。要は写真を使った人形劇のようなものだが、写真がクルクルする事によってポーズや表情が変わって行くのが安っぽくなりそうなところを救っている。これは出演者全員が押井監督の友人知人(要は素人)であることの問題点(演技が出来ない)を解決する為に仕組んだと言えそうだ。
写真をムービーにする時に上記のような加工を取り入れた関係で画面構成はずいぶん自由になった為、キャラクターはある時は2頭身になり、ねずみになり、早変わりし、爆発する。つまりお得意のアニメ的な演出が取り入れられ、迫力のあるダイナミックな構図が多用されている。一番特徴的なのは、キャラクター達の『顔』。どの顔も基本的に広角で撮られており、あたかも小野トモコのイラストのようなユーモラスさを醸し出している。実写では顔だけをそのような形で出す事は出来ないので、スーパーライブメーション特有の表現と言えよう。

ただ、だから映画自体が面白いかと言われれば、ハッキリ言ってつまらない。頭からお尻まで山寺宏一の研究論文調のナレーションが入るのだが、画面との連動性が今イチで、内容の難解さと相俟ってなかなか頭に入って来ない。
各立喰師の話はほぼ独立しているのでショートムービー集とも言えるが、それぞれの作品に明確なストーリーがなく、立喰師の紹介に留まっている。更にはその紹介も論文調のナレーションで説明されるだけの内容が多く、興味をかき立てる要素も少ない。
また楽屋落ちが過ぎる。出演者が友人知人なのは構わないが、ダイコンフィルム版の「帰ってきたウルトラマン」の使用やProduction I.G.自体への言及など、ワタシはクスリと笑えても一般人には何の感慨も与えないだろう。

ただ、上記のような感想は押井監督としては予想した上で作ってる部分もあるだろう。この作品は、押井守の趣味で作った、極めてプライベートフィルムに近いモノなのだと思う。押井守のファンでなければ見ても何の利益も無いので気をつけましょう(汗)。
 
 

立喰師列伝 通常版

立喰師列伝 通常版

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2006/09/22
  • メディア: DVD


こちら続編。登場人物の一人、ケツネコロッケのお銀のスピンアウト企画だそうです。ちなみにこちらは通常の撮影で作られてるそうですw

女立喰師列伝 ケツネコロッケのお銀-パレスチナ死闘篇-

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  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 2006/12/22
  • メディア: DVD


原作。押井守監督は、立喰を描く事がライフワークと語っているとか。どんなライフワークだよ、それ(爆)。

立喰師列伝

立喰師列伝

  • 作者: 押井 守
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/02
  • メディア: 単行本


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