女王蜂 [小説レビュー]
女王蜂(横溝正史) 角川文庫版
金田一耕助シリーズ6冊目。
絶世の美女、大道寺智子が義父のいる東京に引き取られる事になった。しかし、それを阻止しようとするような脅迫状が届く。義父の用意した許婚候補者たちを巻き込み、始まってしまう連続殺人。発端は19年前の智子の実父の事故死らしいのだが・・・。19年の歳月を乗り越え、金田一耕助は事件を解決出来るのか!?
久しぶりに「本格推理」チックな面白さがあって、八つ墓村の感想の最後に書いた通りの展開になって楽しいw
密室トリックに完全にやられた。現代部分の殺人にはたいした仕掛けはなく、この作品のキモはあくまで19年前の密室殺人のトリックにある。言われてみれば『なるほど!』と思えるのに、何故か言われるまで気付かない、という、「本格推理」の妙を楽しませていただきましたw そのトリックの崩し方も鮮やかという他なく、久しぶりに切れのある解決編を読んで、ウレシくなってしまった(爆)。
そして美女美女美女である。横溝節炸裂。いやー、華々しい。男を虜にしまくる女の描写はスゴいの一言だ。文章って便利だなぁ(笑)。
しかしこの作品、登場人物の行動原理のほとんどが性衝動や恋愛感情となっており、ここまでの作品を包んでいた怪奇性が減退しているのが若干残念。今読んでいる「悪魔が来りて笛を吹く」でも肉欲が前面に出ているので、この時期の横溝正史はそういう気分だったのかなぁ、という感じである。
とにかく金田一耕助シリーズの中でこの作品は、怪奇性が後退している事のみは残念だが、ワタシとしては「推理小説」としてはここまでで一番楽しめた作品だった。
こちら石坂金田一4作目。
コメント 0