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シン・ウルトラマンは映画になっていない [邦画レビュー]

「シン・ウルトラマン」(樋口真嗣監督)

シン・シリーズということで世の中的にはかなり期待され、公開後は賛否両論となっている今作。私も公開間もない時期に観に行ったが、なんと言うべきかまとまらなかった。ただ興収も40億円が見えてきたということで、そろそろネガティブなことも書いていいかなと。

つまり以下ほぼネガティブなんで、今作を褒め称えたい人は読まないでください笑。



基本的には『まぁまぁ面白いけど手放しでは褒められない』そしてシン・シリーズとしては三作目にしてかなり評価の落ちる作品という印象。


この作品、庵野作品として見られる語られることが多いと思うが、内容的には明らかに樋口作品。樋口真嗣という人は「NOと言えない」監督なんだろうな…そんな感じで最大公約数的な、みんなの意見をまとめたらこうなりましたみたいな内容という気がする。その中に「シン」であること=庵野秀明が入っているのが良いのか悪いのか。

作品全体のトーンは庵野作品を模して作られている。登場人物の多くが理性的で、描かれる内容は派手なのに、全体を俯瞰して距離を置いた視点から物語が語られている。ところがそんな中で浅見弘子(長澤まさみ)の描写だけ浮いている。ギャグ風味なのだ。これが全体の雰囲気をぶち壊している。

これは「シン・ゴジラ」のカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)と同じ位置づけだが、ゴジラでは後半にならないと登場しないので影響は限定的だったと思う。今回のウルトラマンでは初っ端から浅見が出てくるので、映画全体が落ち着かない。

だいたい長澤まさみがかわいくない。こういう主に男性をターゲットにした映画でヒロインをかわいく撮れないなんて致命傷だと思うのだが…

私見だが、長澤まさみって佇まいで見せる人ではない。割と元気いっぱい活動的で動いているのがかわいい人だと思うので、「シン」としては人選からして間違っている気がするのだが。ここをもう少し理知的で真面目なキャラにして、ギャグ(というかユーモア)担当はメフィラス(山本耕史)に絞ってもっと徹底的にやればよかったんじゃないか?

あと、実は前述のヒロイン問題よりもっと大きい問題が『テレビの4話分を単純につなぎました』みたいな話の組み立てだ。『ウルトラマン登場〜対禍威獣戦』『ザラブ戦』『巨大浅見弘子〜メフィラス戦』『ゼットン戦』このそれぞれがバラバラの物語で、一本貫くストーリーがない(禍威獣がメフィラスの仕掛けだったという話はあったが、言葉だけ)。

公開前にネット民が予想したように『ザラブがメフィラスの手下』だったらもう少し印象が変わったのだが。貫くストーリーがないから、映画全体での盛り上がりがほとんど感じられない。ゼットンの描写にしても、一発くらい火球を発射して、その恐ろしい威力を見せるべきだった。それがないから恐怖感が全く感じられない。予算的にディザスターを描写出来ないなら、そもそもそんなラスボスを設定すべきではない。

いずれにしてもウルトラマンが地球上で活躍したという描写がもう少し必要だ。冒頭の「ウルトラQ」リスペクトを入れるくらいなら、途中にウルトラマンが次々と禍威獣を退治するようなシーンを入れて、ウルトラマンが地球人類に信用されていくシチュエーションを感じさせるべきだった。それがストーリーテリングの基本だと思うのだが。語られている話が全てだと、ウルトラマンがポッと出てきて引っ掻き回して去っていきました、みたいな感じで、話に広がり感がまるでない。

各国の対応などの描写もない、話の中心である禍特対がどの辺りにいるのかの位置関係の描写が全くない、禍特対の日常がほとんど描かれない、バディバディと言う割にはバディで何かする描写もない…この映画には周辺の情報がほとんど出てこないので、腑に落ちないままに見ているからやたらとモヤモヤする。これならザラブの話なんか吹っ飛ばして、この辺りの描写を入れてくれた方が良かった。

つまり私が考える「シン・ウルトラマン」改善策としては、・敵をメフィラスに絞り ・ザラブは大幅縮小しメフィラスの部下に、またはカット ・ゼットン戦もカット!メフィラスをラスボスにしてちゃんと決着をつける ・対禍威獣戦を、簡単ダイジェスト(冒頭のウルQ程度)でいいのであと3〜4回入れ、人間社会の反応を見せる ・禍特対描写をもっと拡大 ・長澤まさみ(てかヒロイン)をちゃんと魅力的に撮る! …等々、でしょうか笑。書き出してみたら多い…

前々から言ってるんですが、樋口真嗣は映画監督やらずに特技監督を専門にした方が良いと思うんだよなぁ。良い人だから(=作家性ゼロ)、周囲が重宝がってるんだろうけど(想像)。監督やらせるなら誰かが守ってあげないと、ちゃんとした映画をつくるのは無理だと思う。今回は東宝(興収・配役)・バンダイ(キャラビジネス)・円谷プロ(予算とウルアイデンティティ)・庵野秀明(ウル愛と作風)に挟まれて、大変だったんだろう。ご愁傷様です…

まぁ、大してデキが良くなくても(失礼)大人向けにつくったヒーロー映画が興収40億いける、っていう実績をつくったのは良かった。子供だましの平成令和ライダーとか平成令和ウルトラマンとかじゃない、大人の鑑賞に耐え得る和製ヒーロー映画がたくさんつくられるようになったら、改めて今作『シン・ウルトラマン』の功績を讃えたいな。
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