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太郎物語 高校編 [小説レビュー]

taro_story.jpg「太郎物語 高校編」(曾野綾子)新潮文庫

大学教授の父と翻訳家の母を持つ一人っ子の山本太郎は高校2年生。そろそろ将来に向けてどうするかを考える傍ら、好きな先輩の相談に乗ったり、陸上短距離走の選手として記録を伸ばしたり、友人の苦労を分かち合ったりと、太郎の短い一年は様々な出来事に彩られていく。

ブログ立ち上げ当初に「〜大学編」という事でレビュー済みの「太郎物語」なのだが、「ノルウェイの森」に関連して再読してみて、もう少しマトモにレビューすべきという気がして来たので、ちょっと書きたいと思う。

ということでまずは「太郎物語」を俯瞰して見てみよう。前編に当たる「高校編」は太郎が高校2年生の春〜冬を描いている。そして後編となる「大学編」は高校3年の終わりから大学2年の始まりまでだ。

ワタシは以前から「大学編」の方が好みだと思っていたのだが、今回通読してみて「高校編」に対する印象が変わった。かなり面白く読む事ができたのだ。何故か、と結構真剣に悩んだのだがwどうやら太郎という主人公に対するワタシの中の捉え方が変わって来たから、と言えそうだ。

以前はなんで「大学編」の太郎の方が好きだったのか。以前のレビューにも書いたが太郎はワタシの考える理想の自分自身だったのだ。太郎に憧れていたのである。理想像なのだから、自分の考える理想に近い方が当然良いのである。その点大学生の太郎は完璧に近かった。

それに対して高校生の太郎はやはりまだ“青い”。「大学編」に比べてバタバタしていて、判断に迷う場面も多い。親との話もまだ幼稚な感が否めないのである。だから、太郎に理想像を重ねていたワタシとしては高校生の太郎はお呼びでなかったのである。

ところが今回の再読では、太郎の設定年齢の倍以上生きて来てしまったワタシの中で、当然とも言えるが感覚の変化があったのだ。従来かなりのシンクロ率で太郎に感情移入して読んでいたのだが、今回はちょっと間を空けて物語を追っていたのかもしれない。

お陰で高校生の太郎の未熟なところが、若さ故の成長の余地としてマイナスというよりはプラスに考える事が出来たのだ。別の言い方をすると、青いところも含めた若さというものに、ワタシ自身がノスタルジーを感じ、共感をしたとも言える。そうなると高校生の太郎もかなりイイキャラクターに感じられたと言う事だ。

その上今回の通読では、今まで以上に太郎の両親にも感情移入が出来た(そりゃ今となってはこちらの方が同年代だw)し、その他太郎の友人たちに対しても今まで以上に気持ちを乗せて読む事が出来たのだ。これは今までだと、やはり太郎一人の視点に極端にこだわって読んでいた為に、周りのキャラクターも太郎の視点からしか見ていなかったのだろう。今回やや俯瞰して物語を追えるようになり、周りへのワタシの目配りが変わって来て見えるようになったのだと思う。

なんだかまたも自分史的な話になってしまったが(笑)、今作は生きるという事を真剣に考え、そして前向きに生きようとする人たちの物語であり、そうあれと考えている人たち全てへの応援歌になっている。しかも真剣に考えるからと言って深刻になるのではなく、ユーモアと言うオブラートに包んで提出して来るから気兼ねなく万人が読める娯楽作品にキッチリとなっている。

ただ何となく生きている人からすれば“イタい”かもしれないが、自分の人生としっかりと向き合おうという気持ちのある人なら誰にとっても面白い作品だと思う。特に(前回も書いたが)思春期まっただ中の人、そして子供を持つ親御さんはこれを読むと人生が変わるかもしれない程の作品。オススメです。


しかし本も高くなりましたよねぇ・・・・。今はこの本、500円ですか。ワタシの手元にあるものは280円ですよ(笑)。みんなもっと本を読もうね。誰の為でもない、自分の人生を豊かにする為に。
太郎物語 (高校編) (新潮文庫)

太郎物語 (高校編) (新潮文庫)

  • 作者: 曽野 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/01
  • メディア: 文庫

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コメント 1

tomoart

>maiwwaさん
nice!ありがとうございます。
by tomoart (2012-05-08 00:15) 

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