ザ・ウォーカー(字幕版) [洋画レビュー]
「ザ・ウォーカー(字幕版)」(監督:アルバート&アレン・ヒューズ)
奥深い森の中で脳天に銃穴を空けて倒れている男の死体。その死肉を漁ろうと、一匹の猫が近づく。何かに気づいたようにふと目を上げる猫の体を深々と矢が貫き、猫は絶命した。食料とする為に矢を放ったのは、誰に対してもあまり名乗ろうとしない“旅行者(=ウォーカー/イーライ:デンゼル・ワシントン)”。心の声に導かれ、来る日も来る日も、西へ西へと長年歩いて来た。巨大な本が入ったナップザックだけを背負って。
時は第三次世界大戦後、既に数十年が経っていた。ほとんどの人類が死滅した世界では文明が失われ、人心は荒廃し、生き残った者たちの間で略奪が横行。そして誰もそれを止められなかった。ウォーカーはその中を、ある時は弱者が死んで行くのをやり過ごし、ある時は降り掛かる火の粉を巨大なナイフや弓矢で振り払った。そうしてある日、ウォーカーは街らしきものに足を踏み入れた。その街は、一冊の本を探し回るカーネギー(ゲイリー・オールドマン)というボスが興した街で、腕の立つ上に教養のあるウォーカーを、カーネギーなりの遇し方で歓待する。久しぶりの暖かいベッドとまともな食事。しかしそれは、彼の旅の中で最も危険な事件の前触れだった。
同日に騒々しい(褒め言葉)「アイアンマン2」の後に観たのだが、これがまた両極端の映画なのだったw この「ザ・ウォーカー」は、アクションシーン(一部にはやや生々しい残酷描写もある)もかなりあるが、映画全体を覆う静謐さが印象的な作品だ。大戦後の紫外線過多な世界を意識してか、特に屋外のシーンでフィルターを多用している映像(キツいセピア調の映像)が、更にその静謐感を強調する。
そう、この作品は“宗教映画”なのだ。もう、色々なところでネタバレ・・・というか、原題「The Book of Eli」自体で多分キリスト教圏ではバレているので言ってしまうと、もちろんここで問題になっている本は聖書だ。この作品は聖書という天の教えを悪から守りながら、天啓によって運んでいる男の話だ。
これは多分近未来のイエス・キリストの話なんだろう。聖書が焚かれ、信仰対象のなくなった世界に、改めてキリスト教を伝搬して行く為の物語だ。終盤の出来事もそれを思わせるし、ソラーラ(ミラ・クニス)の存在は弟子を思わせる。ストーリーの組み立て自体が聖書をもじっているのだ。だから余計に静謐な印象を持つのかもしれない。
宗教的だからつまらないかというと、別にそうではない。文芸作品のような方向性ではなく、これはあくまでもエンタテインメント。荒廃した風景の描写や、アクションなど分かり易い部分もあるし、登場人物もそれほど多くないので、それぞれのキャラクターがそれなりに深堀もされている。ただドラマ的にはイーライが謎の人物なのでなかなか盛り上がらない。しかし、イーライにイエスを重ねているのだから、普通の人物としてのバックボーンを語らせるわけにはいかなかったのだろう。
この作品、日本人としてはかなり好き嫌いの別れそうな作品だ。アクション映画の側面を持ちながら、映像から受ける印象はあくまで静かなもの。その静かさを心地よいと思えるかどうかが、今作を楽しめるかどうかの分かれ道だ。間違いなく「アイアンマン2」のような、万人受けする作品ではないので、誰と観に行くかを間違えると残念な結果になるので気をつけてw
この作品、音楽もなかなか味があって、静かな中にも印象に残るフレーズがあるのだが、もう一段キャッチーで耳に残るフレーズがあったら、もっと映画としても魅力的に見えたと思う。そこが一番残念かな。
今どきLPも出てるんだね(驚)。
奥深い森の中で脳天に銃穴を空けて倒れている男の死体。その死肉を漁ろうと、一匹の猫が近づく。何かに気づいたようにふと目を上げる猫の体を深々と矢が貫き、猫は絶命した。食料とする為に矢を放ったのは、誰に対してもあまり名乗ろうとしない“旅行者(=ウォーカー/イーライ:デンゼル・ワシントン)”。心の声に導かれ、来る日も来る日も、西へ西へと長年歩いて来た。巨大な本が入ったナップザックだけを背負って。
時は第三次世界大戦後、既に数十年が経っていた。ほとんどの人類が死滅した世界では文明が失われ、人心は荒廃し、生き残った者たちの間で略奪が横行。そして誰もそれを止められなかった。ウォーカーはその中を、ある時は弱者が死んで行くのをやり過ごし、ある時は降り掛かる火の粉を巨大なナイフや弓矢で振り払った。そうしてある日、ウォーカーは街らしきものに足を踏み入れた。その街は、一冊の本を探し回るカーネギー(ゲイリー・オールドマン)というボスが興した街で、腕の立つ上に教養のあるウォーカーを、カーネギーなりの遇し方で歓待する。久しぶりの暖かいベッドとまともな食事。しかしそれは、彼の旅の中で最も危険な事件の前触れだった。
同日に騒々しい(褒め言葉)「アイアンマン2」の後に観たのだが、これがまた両極端の映画なのだったw この「ザ・ウォーカー」は、アクションシーン(一部にはやや生々しい残酷描写もある)もかなりあるが、映画全体を覆う静謐さが印象的な作品だ。大戦後の紫外線過多な世界を意識してか、特に屋外のシーンでフィルターを多用している映像(キツいセピア調の映像)が、更にその静謐感を強調する。
そう、この作品は“宗教映画”なのだ。もう、色々なところでネタバレ・・・というか、原題「The Book of Eli」自体で多分キリスト教圏ではバレているので言ってしまうと、もちろんここで問題になっている本は聖書だ。この作品は聖書という天の教えを悪から守りながら、天啓によって運んでいる男の話だ。
これは多分近未来のイエス・キリストの話なんだろう。聖書が焚かれ、信仰対象のなくなった世界に、改めてキリスト教を伝搬して行く為の物語だ。終盤の出来事もそれを思わせるし、ソラーラ(ミラ・クニス)の存在は弟子を思わせる。ストーリーの組み立て自体が聖書をもじっているのだ。だから余計に静謐な印象を持つのかもしれない。
宗教的だからつまらないかというと、別にそうではない。文芸作品のような方向性ではなく、これはあくまでもエンタテインメント。荒廃した風景の描写や、アクションなど分かり易い部分もあるし、登場人物もそれほど多くないので、それぞれのキャラクターがそれなりに深堀もされている。ただドラマ的にはイーライが謎の人物なのでなかなか盛り上がらない。しかし、イーライにイエスを重ねているのだから、普通の人物としてのバックボーンを語らせるわけにはいかなかったのだろう。
この作品、日本人としてはかなり好き嫌いの別れそうな作品だ。アクション映画の側面を持ちながら、映像から受ける印象はあくまで静かなもの。その静かさを心地よいと思えるかどうかが、今作を楽しめるかどうかの分かれ道だ。間違いなく「アイアンマン2」のような、万人受けする作品ではないので、誰と観に行くかを間違えると残念な結果になるので気をつけてw
この作品、音楽もなかなか味があって、静かな中にも印象に残るフレーズがあるのだが、もう一段キャッチーで耳に残るフレーズがあったら、もっと映画としても魅力的に見えたと思う。そこが一番残念かな。
今どきLPも出てるんだね(驚)。
内容のと映画のイメージがかなり違うので パスしておこう^^;
by エコピーマン (2010-06-23 19:18)
>エコピーマンさん
nice!&コメントありがとうございます。多分好き嫌いがハッキリする映画かと思いますんで、無理に見なくてもいい感じですよw
by tomoart (2010-06-24 03:09)