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ラブリーボーン [洋画レビュー]

Lovely_bones_ver2.jpg「ラブリーボーン」(監督:ピーター・ジャクソン)

スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)は1973年12月6日、14歳で殺された。スージーはこの世とあの世の狭間に漂い続け、残された父(マーク・ウォルバーグ)、母(レイチェル・ワイズ)、妹(ローズ・マックィーバ)、弟(クリスチャン・アシュデール)、祖母(スーザン・サランドン)、犯人(スタンリー・トゥッチ)、そして大好きだった彼(リース・リッチー)たちのその後を見守り続ける。

うーむ、何とも形容し辛い作品だ。これはタイトルやシアーシャの笑顔から受けるようなライトで明るい作品では(当然)ないし、配給会社が謳うような感動作でもない。非常にプライベートなもので、多分本当の魅力を感じられる人はかなり少数なんじゃなかろうか。(ワタシも本当に感じたとは言い難いが・・・)

今作のストーリーを見る限り、この作品は長女を殺された家族の、その後の再生物語であり、犯人を追い詰めていくサスペンスでもある、と言う事は出来るのだが、それらは実は大して魅力的に描かれてはいない。
確かに双方ともそれなりに描かれているのだが、どちらも歯抜けなのだ。家族の再生に関しては、肝心の両親、特に母親の再生が全く描かれないし、サスペンスの部分ではラストの一番盛り上がるはずのところで家族再生のシーンがかぶさって来て、わざわざ盛り上がらないようにしてるんじゃないかと勘ぐってしまう程w どちらも全く魅力がない訳ではないのだが、そちらに注力すればもっと魅力的に描けるはずなのに描かれていない、と言った風情だ。

ではピーター・ジャクソンは一体何を描きたかったのだろうか。ワタシが想像するに、それはスージーというキャラクターそのものだったのではないだろうか。
この作品は、スージーのモノローグで始まり、同じくスージーのモノローグで終わる。つまり今作の全てはスージーというフィルターを通して語られているのだ。だからこそ彼女が重視しているキャラクターである父、祖母、犯人などが多く語られており、逆に母は描写が弱いのだ。

14歳まで何不自由なく生きて来て、将来への大きな夢を持ち、チャーミングでちょっと奥手で、でも好きな彼氏にデートに誘われてもう有頂天。そんな時に全てを奪われてしまったスージー。家族の大いなる愛に包まれ、恐れも憎しみも知らずに生きて来た彼女の、その瞬間というのは、人生で一番輝いていて幸せな一瞬なのだと言う事を、14歳を超えて生きている我々みんなが“知っている”。だからこそスージーの悲しみに感情移入してしまう・・・・。そして物語は最後に、とても悲しいけれどもステキなプレゼントを彼女に用意している。それによって彼女は現世とのしがらみをやっと断ち、天国と呼ばれる場所へと旅立っていく。

そのプレゼントは、彼女の憎しみからの解放ではなく、愛からの解放であるところが素晴らしいのだ。

俳優は皆、本当に熱演で、飄々と浮世離れした祖母を演じているスーザン・サランドンを始め、マーク・ウォルバーグも「ハプニング」とは全く違う父親像を演じ素晴らしい。レイチェル・ワイズももうトシだと思ったけど(爆)、悲しみに暮れる母役とは言え美しさも見せていて嬉しいところw

ただ、やはりここはシアーシャ・ローナンを語らずにはいられないだろう。今作の彼女はかなり輝いてる。もう「エンバー 失われた光の物語」の100倍くらい(爆)。やや面長なのが日本人向きじゃないかと思っていたが、今作では髪型やカメラアングルなどもあるのか、それほど気にもならず素直にかわいいです。もちろん演技的にも、クルクルと変わる“悲しみのレベル”をちゃんと演じ分けていて好印象。シアーシャファンは見逃さないように!(笑)

あ、そしてスージーの住む“狭間の世界”のビジュアルは本当にファンタジックで美しい。この辺りはスーザン・サランドンの言っていた通りで、もう一つの見どころになっています。ワタシはもっと限定的なシーンの話かと思っていたけれど、スージーのシーンがとても多く、美しい美術が楽しめるシーンは全編にちりばめられていて目を楽しませてくれています。こちらもかなりの見どころです。


シアーシャ作品。残念ながら劇場公開されませんでしたが・・・。
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マーク・ウォルバーグ作品。『史上最悪の映画』第8位w
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レイチェル・ワイズと言えば、取りあえずワタシ的にはこれw ピンポイントだなぁ・・・・。
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スーザン・サランドンと言えば、ワタシ的には間違いなくコレ!(木亥火暴)
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コメント 8

tomoart

>タケルさん
nice!ありがとうございます。「ラブリーボーン」ご覧になりましたか?よろしければ感想もお待ちしておりますm(_ _)m
by tomoart (2010-02-10 04:07) 

クリス

やっぱりアタマ使ってはダメだったんだと思うんですが、
映画なんで考えちゃいますよね。
イメージングビデオとか言われれば、なにも考えずに観れたかも
しれません。それなら、監督の意図した天国の手前の世界も、
もっと理解できたかも。
by クリス (2010-02-14 14:34) 

tomoart

>クリスさん
nice!&コメントありがとうございます。
ワタシの書き方が悪かったですが、ワタシが「感じる」と言ったのは、ビジュアルイメージを楽しめば良い、という意味ではなくて、例えば波乗りのようにスージーというキャラに“乗って”楽しむ、というような感じでしょうか(サーフィンした事ないけど爆)。スージーと同化してストーリーを“感じる”事で、今作を楽しめるんじゃないか、という感じかな。

第三者的視点で見ていて出て来る不満というのが解決する訳ではありませんが、第三者的視点では感じられない魅力は間違いなくあると思うんですよね。

まぁ、スージーと同化するところまで観客全員を誘えなかった、という問題はあるのかもしれませんけど・・・・そこまで言っては酷かなぁ。
by tomoart (2010-02-14 16:10) 

tomoart

なんか、説明すれば説明する程、今作の本質からズレて来てるような気がする・・・・(汗)。
by tomoart (2010-02-14 16:23) 

coco030705

こんにちは。コメントが遅くなってすみません。

私としては、感情移入できない作品だったんですが、
tomoartさんのレビューを読むと、そういう見方もあるのか、
と思いました。いいレビューだと思います。
by coco030705 (2010-02-15 13:53) 

tomoart

>coco030705さん
nice!&コメントありがとうございます。全然マイペースで結構ですんで、たまに顔出して下さいね。

ワタシの感想はやや少数派らしいですがw映画は嗜好品ですから色々な意見があっていいですよね。英国王室ご推薦映画でもあり、魅力を感じたのはワタシだけではないのは間違いないので、あんまり色眼鏡でみんなに観て欲しくないなぁ、と思っています・・・・。

ラスト近く、犯人があの問題の金庫を穴に捨てようとしている時、ワタシはてっきり犯人を告発する為、自分の体を取り戻す為にルースに乗り移ったのかと思ったら、レイとキスをする為だったというのが象徴的だと思うんですね。彼女は犯人を憎んでいても、やはり愛を選ぶ少女だったと。
そういうとこで、スージーっていい子だなぁなんて思っちゃいましたw でもそれで観客を犯人への憎しみに導いている訳じゃないんだろうと思うんですよ。単純にスージーと同化して、やり残した事を成就して、安らかな気持ちで天に召されていく事に満足してもらいたいんだと思うんですよね。だから犯人が最後にああいう結末になるのは、まぁ、オマケみたいなものだと思っているんですけど。

また長々と説明しちゃった・・・・(汗)。
by tomoart (2010-02-15 21:44) 

k_iga

はい、シアーシャ・ローナンの可憐さに惹かれて借りました。

何故か「ラブリーボーン」を「ラブ・リボーン」と記憶していて
最後には何らかの形で再生(リボーン)する映画だと思っていたら
(例えば将来、妹の子供としてとか)そうじゃないし、
連続殺人者のメガネのオッサンは不気味だし・・・。

賛否両論あるようですが天国との中間地点?は美しくて良かったです。
(お祖母ちゃん(スーザン・サランドン)は何のための出演?)
by k_iga (2012-05-31 15:10) 

tomoart

>k_igaさん
nice!&コメントありがとうございます。ご覧になったんですね(^-^) 「ラブ・リボーン」はちと笑いました(笑)。
納得出来なかった人が多かった作品ですがwワタシ的には味があって映像も(シアーシャ含めw)美しかったし、良い作品だったと思うんですけど。

スーザン・サランドンは、軽い言い方になりますが“コメディリリーフ”じゃないでしょうか。主題が重くなりがちなものですし、その中和剤という事で。そして悲観に暮れる父母に代わり、妹弟を庇護し導く役でもありましたね。
by tomoart (2012-06-01 01:45) 

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