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KAPPA [小説レビュー]

kappa.jpg「KAPPA」(柴田哲孝) ※徳間文庫

フリーのルポライター、有賀雄二郎は、変死事件の取材に茨城県牛久沼にやって来る。なんと釣り人の一人が川に引き込まれ、下半身だけになった死体が揚がったのである。しかも目撃者が語る犯人像、それはカッパだと言うのである。
果たしてカッパは実在するのか、あるいは人間の犯行か、それとも・・・・。

有賀雄二郎登場の第一弾。初登場だけあって、割とバックボーンもしっかり書き込まれているので、次回レビュー予定の有賀雄二郎第二弾「RYU」を読むにしても、どうせならこちらから読まれる事をお薦めする。

さて、前回レビューした「TENGU」との関連であるが、執筆年代が実は結構違う。本書の発表は1991年、「TENGU」は2006年。その間15年という開きだ。その執筆と執筆の間に作者は例の「下山事件〜」を上梓した訳だが、多分その辺りで作家のレベルが飛躍的にアップしたに違いない。本作は決してつまらなくない、面白い方だと思うが、どうしても「TENGU」の大きなスケールと比較すると見劣りしてしまう。小さくまとまってしまっている印象だ。

一方「TENGU」と比較した時に本書の良さは、一つはスピード感というか、勢いがある。著者が若かったから、という事もあるだろうし、主人公の年齢設定も違う(本書の有賀は33歳、「TENGU」の道平は49歳、ちなみに発表時の柴田氏の年齢は本書時34歳、「TENGU」時49歳。わかりやすいw)。また本書は、上記ではスケールの小ささという事でネガティブに書いたが、見方を変えれば牛久沼中心に話が進み、他のエリアは味付け程度にしか出て来ないのは、一気呵成に話が進んで行く要因でもあろう。

もう一つは、あまり書くとネタバレになってしまうのだが、本書は「推理小説」になっている。確かに犯人像は奇抜過ぎて謎解きの勝負といった風情はないが、現実に立脚した話だ。それが一つだけではあるがSF的味付けのある「TENGU」との、小さくて大きな違い、かもしれない。


という事で本書。何度も言うようですが、有賀雄二郎第1弾。
KAPPA (徳間文庫)

KAPPA (徳間文庫)

  • 作者: 柴田 哲孝
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 文庫

有賀雄二郎35歳の第2弾。1992年発表作で、直接の続編になります。近々レビュー予定。
RYU (徳間文庫)

RYU (徳間文庫)

  • 作者: 柴田 哲孝
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2009/04/03
  • メディア: 文庫

有賀雄二郎48歳の第3弾。まだ読んでません。作中で「RYU」から13年経っており、その設定がちょっと悩ましい。そしてどうやら粗筋を読む限り、この作品も「TENGU」同様ifを含んだ小説のようだ。まだ文庫化されていないので、文庫で出るまで待った方がいいかも。
ダンサー

ダンサー

  • 作者: 柴田 哲孝
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本

ちなみに「TENGU」にゲスト出演した時の有賀は43歳くらい。「RYU」と「ダンサー」の間の話という事になる。
タグ:柴田哲孝
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