ライラの冒険 黄金の羅針盤 [洋画レビュー]
「ライラの冒険 黄金の羅針盤」（監督：クリス・ワイツ）我々の世界とはいささか違う世界。人間の魂はダイモンと呼ばれ、その人に寄り添う動物の形をしていた。そして“教権”が世界を掌握していたが、人々は“教権”に対して反感を抱いていた。
ジョーダン学寮に寄宿しているライラは孤児で、叔父のアスリエル卿が後見人となっていた。親友のロジャーと共に今日も“ジプシャン”の子供・ビリーたちと遊び回っていたライラだったが、その日はライラの嫌っている学寮長との会食の日だった。退屈な会食の場所に現れた美しいコールター夫人が学寮長をやんわりとやり込める姿を見て、ライラは夫人に夢中になる。そして夫人は彼女に『北への冒険に同行して欲しい』と願い出る。北の国はアスリエル卿も世界の秘密を解き明かす為に幾度となく冒険している地。有頂天になるライラに、学寮長はそっと“黄金の羅針盤”を手渡す。『コールター夫人に見つかってはいけない』という助言と共に・・・・。
うーむ、話としては詰め込み過ぎな気がした。サラサラと話だけが進んで行ってしまうので、観ている側の気持ちがついて行けないのだ。特に出だし。この世界ではない何処かという世界観の説明はいいのだが、“ジプシャン”“ゴブラー”“教権”といった固有名詞が大量の登場人物たちの名前と共に説明もなく出て来るので、頭の中が混乱しがち。お陰でスムーズにストーリーに乗れないのが最後まで響いているような気がする。
また微妙に謎が放置されて行ってしまうのも乗れずに引っ掛かってしまう一因。ライラとロジャーはどうして親友になったのか？何故ジプシャンはライラを監視していたのか？何故今頃コールター夫人はライラに注目したのか？教権の支配はどういう形で、どれくらいの広がりがあるのか？云々云々・・・・。
また詰め込み過ぎの最大の問題がライラの成長物語であるはずの本作の中で、それがうまく見えて来ないところ。冒頭では嘘つきで世間知らず、どちらかと言うと自分勝手な女の子が、最後は大きなクマの大群や大人たちを向こうに回して大立ち回りを演じ、仲間の為に泣いたり頑張ったりする程に変わっていく訳だが、どこでそれほどの大きな変化が彼女の内面で起こったのかが今イチ見えて来ない。コールター夫人との確執、ゴブラーが目の前で撃ち殺された場面、ジプシャンたちや気球乗りのリー、クマのイオニクとの出会いなど、シチュエーションはいっぱいあるのだが、それぞれのシーンでライラが感じた事が観ている側に伝わって来ないのが最大の要因だろう。ここがクリアーになっていれば、この映画の印象はずいぶんと変わったはずだ。
しかし、全くの異世界をここまで緻密に描写した作品も久しぶり。レトロ・フューチャー+αな美術（特に前半）は非常に素晴らしかった。確かにあくまでCGではあるのだが、その雰囲気は「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」並の素晴らしさ。「スター・ウォーズ」ではその明る過ぎて全てが見えてしまう“軽い”CGに非難が集中したが、今作のようなファンタジーの世界観には非常にマッチしていて良かったと思う。
さて、取り敢えずこれで映画を観たので、今度は原作を読んでみたい！多分原作を読んでいればこの映画ももっと違う印象なのだろう。初期の「ハリー・ポッター」映画と同様。
- 作者: フィリップ プルマン
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 文庫
黄金の羅針盤〈下〉ライラの冒険
※ちなみに先日の「ニュー・ライン・シネマ吸収合併」記事を読んでいたので、冒頭のニュー・ライン・シネマのロゴが出て来たところでちょっと寂しくなりました・・・・。
この映画、宣伝がすごいですよね。
おもしろそうなんで見たいんですが、色々ムリな箇所もあるようで・・・。
私は「クマのイオニク」が好きなので、なんとか見に行きたいと思っています。
by coco030705 (2008-03-04 22:35)
＞coco030705さん
こんばんは。nice!&コメントありがとうございます。
イオニク・バーニソンはおいしい役なのでw白クマ好きには嬉しいです。リアルなので、ぬいぐるみみたいにかわいくはないですけど。
あと気球乗りのリー・スコーズビー役のサム・エリオットがいい味出してます。この人、何の映画に出てもカッコいいね（爆）。
今日、原作本を買って来ました。今は「ラヴクラフト全集7」を読んでるんで、その後にでも読もうと思っています。
by tomoart (2008-03-05 01:04)