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博士の愛した数式 [邦画レビュー]

博士の愛した数式(監督:小泉堯史)

「阿弥陀堂だより」の小泉堯史監督という事で、ビミョーな題材ながら期待して劇場で観た。
結果、期待ほどではなかったが、そこそこ面白かった。

家政婦として働いているシングルマザー(深津絵里)。彼女は新しい働き先として、80分しか記憶が持たない数学者である博士(寺尾聡)の家に派遣される。愛想もなく、数字に関する問い掛けをして来るだけの彼に戸惑ったが、次第に彼を理解し、内に隠された優しさを感じるようになる。ある日、彼女がシングルマザーである事が博士に露見。彼は子供が放りっ放しである事に異常な心配を示し、以降、学校が終わったら子供を家に連れて来る事を彼女に約束させる。こうして奇妙な疑似家族の優しさに包まれた生活が始まる・・・・。

ま、「阿弥陀堂〜」を超える事はなかった訳だが、そこまでの期待をかけるのは、所詮無理がある。ワタシは「阿弥陀堂〜」の、最初の風景を俯瞰した映像だけで泣けてしまった人間だし(爆)。そんな作品にそうそう出会えたらおかしい。
とはいえこの「博士〜」も、テイストは「雨あがる」「阿弥陀堂〜」からつながる小泉ワールドになっていて、大変好感の持てる内容。映画にハラハラドキドキを期待する向きには全く退屈だと一蹴されるだろうが、ハマる人には堪えられない世界だ。 映像的には今回は長野県、パンフを読むと千曲川らしい河辺の風景が美しい。残念なのは博士の家のオープンセット周りが暗く、開放感がないのが、場面が多いだけに全体の印象を悪くしている気がする。 まぁ、そのたたずまい自体が博士のキャラクターを表現する一手段となっているのだと思うので、仕方ないところかもしれんが。

また、深津絵里がちょっと庶民的すぎる気がするのも好みでなかった・・・。役としてはハマっているので、あくまで好みなのだが、「雨あがる」の宮崎美子のひょうひょうとして動じない浮世離れした雰囲気、「阿弥陀堂〜」の樋口可南子のきりりとした存外な美しさに比べてちと弱い。

色々不満を書いてしまったが、この映画の白眉、「博士の〜」独特の面白さは、ちりばめられたペダンチックな数学の解説。約数、完全数、素数、友愛数、階乗などなど・・・・。こういった解説は本より映画の方が分かりやすく伝わって、俄然数字に興味が湧いてくるのだ。これは楽しい!

この映画のラストは、ちょっと観念的でイメージシーンのようになっている。原作の本も読んだが、原作は意外にも切なく、物悲しさを秘めて終わる。しかし、映画のラストは、もう少し明るく、開放的だ。これは鑑賞後の気分にはとても有効だった。もしかしたら、描いている内容はほとんど変わらないのかもしれない。その上で、希望を感じるラストとなったのは、あくまでも家政婦である『私』の視点で終わった原作と、ルートの視点で物語を語った映画の一番の違いなのかもしれない。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2006/07/07
  • メディア: DVD


 
こちらは原作本です。第1回本屋大賞受賞作です。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫


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コメント 1

ken

この原作に手を出した段階で小泉監督の「負け」だったと思います。
字面でこそ面白みを発揮する「公式」ですから、小泉監督がそこをどう
演出してくれるのか期待したのですが、さすがに難しかったようですね。
by ken (2006-12-26 21:40) 

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